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第166話

(ディルside) 「異世界の勇者とは興味深いものだな」 皆が部屋を出ていった後、父上がそう呟く。 父上にフタバを会わせたのは、半分は賭けだった。 父上がフタバの事を気に入れば大きな後ろ楯になる、そう思った。 多分この先、フタバにとってはこの後ろ楯が必要になると思う。 それは俺では力不足だ、父上ならフタバの力になってくれると思う。 「しかし、どこか危うさも感じる」 「それは私も感じてます」 どこがと言われると困るが、どことなく感じる危うさ。 フタバの世間知らずもそれに拍車を掛けてる。 「フタバに関しては、こちらは何も干渉はしない。そなたの言う『人となり』も確認出来た。これからも自由に動くが良い」 「ありがとうございます」 そう言って俺は父上に頭を下げた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ (レオーネside) 「本当によろしかったのですか?勇者をレオーネに引き込むチャンスだったのでは?」 ディルハルトが部屋出ていってからすぐ、ゲイムがそう言う。 「フタバはこの世界そのものに属さぬ存在。今我らがフタバを取り込もうとすれば、フタバは完全に我らの前から姿を消すぞ。それに勇者の実力は計り知れない、みすみすレオーネを危険に晒すわけにはいかない」 ディルハルトの言う、フタバが王族に嫌悪感を持っているというのは何となく分かった。 フタバはこの部屋に入ってから一度も警戒心を解かなかった。 にこやかに話してはいたが、常にこちら側の言動を見ていた。 あれは我らの手に負える存在ではない。 ならば今は、フタバを自由にさせておく方が得策だ。

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