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第168話
(レイスside)
馬車を下りると、フタバに手を差し伸べた。
フタバがその手を取ろうとした瞬間、フタバの体がグラッと揺れた。
俺は倒れそうになるフタバの体を慌てて受け止めた。
無理な体勢で受け止めたせいか、バランスを崩して俺まで倒れ込んでしまった。
「フタバ!?」
俺は体を起こしてフタバの様子を見る。
フタバは完全に意識がなかった。
「フタバ!?」
「フタバさん!?」
ディルとリオも倒れたフタバに駆け寄ってきた。
「何で急に倒れた?」
ディルがそう聞いてくる。
「俺にも分からない」
王宮から出たときに少し調子が悪そうにしていた。
フタバは疲れただけだと言っていた。
まさか、倒れるとは思わなかった。
「レイス様、取り敢えずフタバさんを中へ」
『ここでは何も出来ません』とリオが言う。
俺はフタバを抱きかかえると中へ急いだ。
中に入ると、出迎えに集まった使用人たちが俺たちの様子を見て騒然とする。
そんな使用人たちにリオが指示を出す。
その指示を受けて使用人たちがバタバタと動き始めた。
俺たちもフタバを連れて部屋に向かう。
部屋についてフタバをベッドに寝かせると、急かさずリオがフタバの処置を始めた。
少しするとリオの指示なのか、使用人たちが処置に必要な物を持ってきた。
俺とディルは少し離れた場所でその様子を眺めていた。
「…どうだ、フタバの様子は?」
処置が一段落したところを見計らってディルがリオにそう聞く。
「魔力中毒のようです」
そうリオが答える。
「魔力中毒?」
聞きなれない言葉に、俺は思わず聞き返してしまった。
「魔力中毒って言うのは、大きい魔力に体が耐えきれず不調を起こす現象だ」
そうディルが言う。
「申し訳ありませんでした。魔力中毒に気付く事が出来ませんでした、フタバさんの魔力量を考えると安易に予測は出来たはずなのに」
そう言ってリオが頭を下げる。
「いや、俺たちも気付かなかった」
そう言ってディルが頭を下げるリオを戻させた。
俺は眠るフタバにそっと触れた。
「…その魔力中毒っていうのは治るのか?」
「魔力が体に馴染めば」
「……そうか」
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