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第169話

(レイスside) 魔力中毒。 生まれつき魔力が高い人や、レベルアップによって魔力が大幅に上がった時などに、体が巨大な魔力に耐えきれなくなる症状。 フタバの場合、元の世界では魔力を持ってなかったらしい。 それがこっちの世界に来たことで巨大な魔力を得たことで魔力が体に馴染まず、魔力中毒になったとリオが言っていた。 俺はフタバの眠るベッドに腰掛ける。 そっとフタバの頬に触れた。 フタバの腕には魔力制御の腕輪がはめられている。 それでも完全に押さえる事は無理らしく、そのせいで体温が上がったり極度に下がったりしている。 体温が上がった時は苦しそうに、下がった時は寒そうに体を震わす。 相当辛いんじゃないかと思う。 俺は魔力が無いからその辛さは分からない。 フタバの様子を見ていると、扉が小さくノックされた。 扉を開けるとリオが立っていた。 「フタバさんの様子はいかがですか?」 「分かりはない」 「そうですか。フタバさんは私が診てますので、レイス様は休んでください」 そう言われて、俺はフタバに視線を移した。 「……いや、俺が診てるよ」 「分かりました、では何かあったら呼んでください。あとこれを」 そう言ってリオが小さい包みを渡される。 「これは?」 「薬です。気休めではありますが、魔力を整えるものです」 『症状が今より悪化したら水に溶いて飲ませてください』とリオは言う。 「レイス様もきちんと休んでくださいね」 そう言ってリオは去っていった。 俺はリオから受け取った水と薬をベッド横のサイドボードに置いてまたフタバの様子を見る。 今は体温が上がってるみたいで荒い呼吸を繰り返していた。 俺は濡らしたタオルでフタバの汗を拭った。 多分、今度は体温が下がってくる。 新しいお湯を用意しといた方がいいな。 そう思って俺は近くに居たメイドにお湯を持ってくるように頼んだ。 しばらくすると、そのメイドが桶に入ったお湯を持ってくる。 それにはお湯の温度が下がらないように魔法がかけられてるみたいだった。 多分、リオがかけたんだろうな。 リオもフタバの事が気になって仕方ないみたいだ。 そう思って、俺は思わず笑ってしまった。

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