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第171話

ふわふわして、自分が今どんな状態なのか分からない。 そんな中で、誰かが呼んでる気がした。 真っ暗だった視界が段々と晴れていく。 「…………れ…いす?」 視界が晴れて、最初に目に入ってきたのはレイスの顔だった。 「フタバ、良かった目が覚めて」 そう言って、レイスはホッとした笑顔を見せた。 「え!?俺、3日も寝てたの!?」 俺が目を覚ました後、ディルとリオさんが来て俺の体調をチェックした後いろいろ説明してくれた。 王宮から離宮に帰って来た途端、倒れてそのまま3日間も眠り続けた。 その間も何回か容態が悪化して目が離せない状態だったらしい。 一般的な魔力中毒はこんなに酷いものじゃなくて、本来なら2~3日で完全に魔力が馴染むらしいけど、俺の場合は一番酷い状態が落ち着いただけで馴染むまでにはまだ時間が掛かるらしい。 完全に魔力が馴染むまでは絶対安静だと、リオさんに言われてしまった。 まぁでも、今は言われなくても動けないんだけど…… 「……心配かけてごめんなさい」 そう言って俺は皆に頭を下げた。 「いや、こちらも本来なら前もって対処出来たのにそれに至らなかった」 『申し訳ない』と言って今度はディルが頭を下げた。 そんなやり取りをしていると扉がノックされて、リオさんが扉を開ける。 扉を開けるとメイドさんがワゴンを押しながら入ってきた。 どうしたのかと思って見ていると、メイドさんはリオさんにスープの乗ったトレイを渡して出ていった。 「食べられるだけで結構です」 そう言ってリオさんがスープの乗ったトレイを俺の前に置く。 俺の前に置かれたのは、細かくきざまれた野菜が入ったスープ。 俺はスープを一口飲んでみた。 その瞬間、ジワッとスープの熱が体に広がってホッと息を吐いた。 起き抜けで食べられないと思ってたけど、意外に食べれてしまった。 ほどよい満腹感で、また眠くなってくる。 ウトウトし始めると、皆が部屋を出ていこうとした。 俺は咄嗟にレイスの服を掴んだ。 「どうした?」 そう言ってレイスが首を傾げる。 そう聞かれて、俺はレイスの服を掴んでることに気付いて慌てて手を離した。 「…ご、ごめん」 俺が謝ると、レイスがベッドの横にしゃがんだ。 俺の目線の高さまでしゃがむと、レイスはフッと笑った。 「どうした?」 また聞かれて、俺は一瞬目を泳がせる。 「……レイスも、行っちゃう?」 何でだろう。 一人になると思ったら、すごく心細い。 側に居て欲しいけど、レイスも忙しいよね…… そう思って、俺はレイスから目を逸らせた。 その瞬間、頭にポンと手が置かれた。 「フタバが寝るまで居るから」 そう言って、レイスは微笑んだ。

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