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第176話

(レイスside) ダンジョンに向かう当日、フタバは朝からハイテンションだった。 まぁ、こうなる事は予測していた。 ダンジョンと聞いただけで舞い上がってたフタバが、実際に行くとなるとテンションが上がらない訳がない。 でもフタバの場合、そのテンションが最後まで持たない。 最初に騒ぎすぎて、途中で確実に力尽きる。 案の定、ちょっと前まで窓の外を見て騒いでたフタバは今は大人しくなっていた。 俺は大人しくなったフタバをチラッと見た。 フタバは窓の外に視線を向けてるけど、今にも寝てしまいそうだ。 「フタバ、眠いなら寝れば良いだろ」 そう言うと、フタバは首を振った。 「……大丈夫」 フタバはそう言うけど、目は今にも閉じてしまいそうだ。 何をそんなに意地を張ってるのか…… そう思って、俺は息を吐いた。 俺は頑なに窓の外を見ているフタバの頭を掴んで自分の方に引き寄せた。 「わっ!?」 引き寄せた俺をフタバが驚いて見てくる。 「楽しみなのは分かるけど、ダンジョンに着くのはまだ先なんだ。そんなんじゃダンジョンに着いたときに動けなくなるぞ。それに昨日の夜もテンション上がって寝てなかっただろ」 そう言うとようやく観念したのか、フタバが体の力を抜いて俺に凭れ掛かってきた。 そのすぐ後に寝息が聞こえてくる。 ……やっぱり限界だったんだな。 そう思って、フタバの寝顔を見ると自然と笑みが溢れた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ (ディルside) リオと今後の進路の事や、ミラの町に着いてからの事を話していてふとレイスたちの方を見ると、フタバがレイスに凭れ掛かって眠っていた。 「なんだ、フタバは寝てしまったのか」 「朝からはしゃいでいたし、夜も興奮して寝れなかったみたいだからな」 そうレイスが言う。 「ははっ、フタバはまるで子供だな」 実際、フタバが17だと聞いたときは驚いた。 てっきり12~3 だと思ってたから、俺たちとそう変わらない年齢だと信じられなかった。 フタバは言動は子供っぽいけど、たまに信じられないくらい大人びて見えることもある。 それはフタバの不思議なところだ。 「この世界はフタバにとってはずっと求めていたものなんだ。はしゃぐのも無理はない」 そう言ってレイスはフタバの頭を撫でながら優しく微笑む。 まったく、あんな笑顔を向けるくせに無自覚とはな。 「フタバは何をしでかすか分からないから、しっかり見張っとかなきゃな」 俺が少しイタズラっぽく言うと、レイスは『そうだな』と言って笑った。

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