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第178話

ご飯を食べ終えて、リオさんにテントに案内された。 テントの中に入ると、俺は言葉を失った。 俺が入った大きいテントの中は、簡易ではあるけどベッドが置いてあって、魔道具を使って気温が適温に保たれている。 ……なんか、思ってた夜営と違う。 なんだけ、こういうの。元の世界で流行ってた気がする。 「ボーっとしてどうした?」 テントの内装に圧倒されて立ち尽くしていた俺に、レイスが後ろから声を掛けてきた。 「……いや、なんか豪華過ぎて」 俺がそう言うと、レイスが首を傾げる。 「そうか?」 レイスの話では、ディルが王族として夜営するときはもっと豪華らしい。 今回は王族としてではないから、これでも小さいテントらしい。 ………なんだろ、やっぱり感覚の差なのかな。 俺にとっては、従者用のテントでも大きいと思ってたのに。 ………もう、考えても仕方ないのかな。 そう思って、俺はため息をついた。 「明日も馬車での移動だよね?」 「そうだな」 俺とレイスは寝る準備をしながら明日の事を話す。 「1日馬車?」 「そうなるな」 そう言うレイスに、俺は『そっか』と頷いた。 ミラの町までは馬車で3日掛かる。 聞いてはいたけど、今日もほぼ1日馬車に乗ってたから明日も馬車だと思うとちょっと気が滅入る。 まぁ、今日はずっと寝てたからそこまで苦ではなかったんだけど…… 「どうした、馬車移動はもう飽きたか?」 「そういう訳じゃないけど、多分気が急いてる。長距離をこんなにゆったり移動したことないから」 「そう言えば、フタバの世界には早く移動出来る乗り物があったんだよな?」 「うん、車や電車があるよ」 「その乗り物はそんなに早いのか?」 『早く移動出来る乗り物』っていうのがレイスには想像出来ないみたいで、首を傾げながらそう聞いてくる。 「この距離だったら、車なら1日くらいかな。電車なら2~3時間ってとこだと思う」 まぁ色々条件があるから、実際はもっと掛かると思うけど。 「………そんなに早いのか」 レイスはそう言って、驚いた表情を見せる。 その後、レイスが『そんな早く走る乗り物なんて、乗るのも命懸けだな』とあまりにも深刻な顔をして呟いたから、俺は思わず笑ってしまった。

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