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第180話
朝、朝食を済ませて片付けて出発する。
昨日の夜は中々寝付けなくて、結局寝たのは明け方だった。
レイスに起こされて起きたは良いけど、まだ眠い。
そう思って俺は、ふぁ~とあくびをした。
「眠そうだな」
レイスがクスクスと笑いながらそう言う。
「昨日は昼間に寝ちゃったから、夜に中々寝付けなくて、寝たのは明け方だったんだよね」
馬車はカタカタと心地いい振動だし、外はひたすら森が続いていて良い感じに眠気を誘う。
でもここで寝たらまた夜に寝れなくなると思って、俺は頑張って起きていた。
でも、このままだと確実に寝るな。
そう思った瞬間、突然馬車がガタンと大きく揺れて停まった。
「うわっ!?」
「フタバ!?」
その振動で前に倒れそうになった俺をレイスが受け止めてくれた。
「っ!?なに?」
「分からない」
「どうした、何があった!?」
突然停まった事で、ディルが従者に原因を確認する。
「魔物です!魔物の大群が来てるみたいで」
従者が慌てた様子でそう言う。
俺たちは馬車から外を確認した。
外を見ると、魔物の姿はまだ見えない。
でも遠くの方からドドドッと地響きみたいな音が響いてくる。
その瞬間、馬車の中の空気が一瞬にしてピリッとした。
「リオ、探敵!俺とレイスで迎え撃つ!」
そう言って、ディルが馬車を飛び出す。
レイスとリオさんもそれに続いた。
俺も皆に続いて馬車を下りた。
「リオ、どうだ?」
ディルが周りを警戒しながら、探敵をしているリオさんに聞く。
「まだ距離はありますが、かなりの数の魔物がこちらに向かっています」
「正確な数は分かるか?」
「申し訳ありません。かなりの数としか」
リオさんがそう言うと、ディルは『分かった』と頷いた。
レイスとディルは剣を抜いて魔物が来る方に神経を向けている。
リオさんも俺たち全員と馬車に結界を張っていた。
地響きが近付いてくるに連れて、レイスとディルの周りがピリピリとする。
二人ともすごい殺気……
俺はいつになく殺気立つ二人にゴクリと喉を鳴らした。
魔物の大群が近付いてきてるんだから二人が殺気立つのも分かる。
……でもどうして魔物が大群で?
考えられるとしたらスタンピード。
でもこんなところでスタンピードなんて起きない。
スタンピードは、ダンジョンで産まれた魔物が討伐されずに容量を超えて溢れ出る現象だ。
この辺にはミラのダンジョンしか、他にダンジョンは無いと聞いた。
魔物の大群が来たのはミラとは違う方向だし、他に原因が………
「来ます!!」
そう叫ぶリオさんの声に、俺はハッとした。
向かいの茂みを見た瞬間、無数の影が茂みから飛び出してきた。
茂みからは次から次に魔物が飛び出してくる。
ホーンラビットに狼系の魔物、ゴブリンまで居る。
向かってくる魔物たちにレイスとディルが構えた。
でも魔物たちは俺たちには目もくれず避けていく。
その様子に全員が呆気に取られた。
「………どうなってるんだ?」
魔物たちが走り去っていく様子に、ディルがボソッと呟いた。
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