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第186話
「………落ち着けよ?」
「大丈夫、落ち着いてる」
「………明らかにそう見えないから言ってるんだが」
そう言ってレイスがため息をついた。
俺たちはダンジョンに向かう前に、ダンジョン攻略の登録と来る途中に起きた魔物大行進の報告をするために冒険者ギルド、ミラ支部に来ていた。
ここはダンジョンが近いこともあって冒険者が多い。
ミラのギルドも朝から冒険者たちでごった返していた。
リオさんが受付の人と話している最中、俺はその受付の人にくぎ付けだった。
そんな俺をレイスとディルが両サイドから押さえ込んでいた。
多分端から見たら、俺は今にでも飛び掛かって行きそうなくらい興奮しているだろう。それもその筈だ。
これが興奮せずに居られるだろうか。嫌、無理だ。
断言しても良い!彼女を見て興奮しない人なんて俺の世界には居ない!
銀色に輝く滑らかな髪、煌めくエメラルドグリーンの瞳、尖った耳、色白の肌にふくよかな体躯。
憧れ求めた存在が……絵でも映像でもない、本物のエルフが今俺の目の前に居る!
「ねぇエルフだよね!?あの受付の人エルフだよね!?」
俺は左右で俺を捕まえてるレイスとディルを交互に見て聞く。
「……あぁ、そうだな」
とレイスが呆れ気味に答える。
「まさか本当にエルフに会えるなんて思わなかった」
そう言って、俺はもう一度受付の人に視線を移す。
「いや、多分彼女はハーフエルフだ」
エルフだと興奮している俺に、ディルがそう言う。
「ハーフエルフ?」
ハーフエルフは両親のどちらかが人間って事だよね。
「エルフは基本森に住んでいて、そこから出てくる事はあまり無い」
『俺もエルフには会ったことがない』とディルは言う。
エルフは元々警戒心が強い種族でもある。
それにあの見目麗しい容姿は、悪意ある人まで呼び寄せてしまう。
エルフは貴族とかの奴隷として捕獲される事がある。
その為に、エルフは人間を遠ざける傾向にある。
俺のこの知識は漫画やアニメに出てくるエルフによくある設定だ。
でも、この世界にもそういったのがあるのかもしれない。
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