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第187話

「………何をされてるんですか?」 受付から戻ってきたリオさんが俺たちの姿を見て呆れ顔になる。 「フタバが受付のエルフの女性に飛び掛かって行きそうだったから止めてたんだ」 そうディルが答える。 「そんな事しないよ」 「どうだかな。今も彼女と話がしたくて仕方ないんだろう?」 そう言ってディルはニヤッと笑う。 「当然でしょ!だってエルフだよ!?」 俺はグッと拳を握って食い気味にそう言う。 「………お前、そういうとこ潔いよな」 ディルが呆れ気味にそう言った。 その様子をレイスはクスクスと笑いながら見ていた。 「はいはい、じゃれ合いはそこまでです」 そう言ってリオさんがパンパンと手を叩いた。 「早く登録を済ませてしまわないと、ダンジョンに向かう時間がどんどん遅くなりますよ」 リオさんにそう言われて俺は慌てた。 「それダメ!!」 「じゃあ早くギルドカードを提出してください。それで登録完了ですよ」 俺は急いでポーチからギルドカードを取り出した。 これは無限収納を使うまでもない小物を入れるためにリオさんが用意してくれたもの。 無限収納を誤魔化す為にこの世界に唯一存在する収納魔法のマジックバッグを模したものだ。 俺が使ってるのはあくまで『模したもの』だから、ただのカバンなんだけど。 俺は皆と一緒にギルドカードを受付のお姉さんに渡した。 本当はこのエルフのお姉さんと色々話をしてみたいけど、今は受付の方が先。 「はい、確認させて頂きます。レイスさんにディルさんにリオさんにフタバさんですね。 ………あら?フタバさんだけDランクなんですね、大丈夫でしょうか」 そう言われて俺は首を傾げた。 「えっと、言いにくいのですが、AランクのパーティーにDランクの方は厳しいんじゃないかと……」 受付のお姉さんが少し気まずそうにそう言う。 ……あ、そうか。Dランクはまだ冒険者見習いみたいなものだから、Aランクの冒険者と一緒は足手まといだと思われてるんだ。 受付のお姉さんの話を聞いてか、周りからヒソヒソと話声が聞こえてくる。 聞いてみると、『AランクパーティーにDランクなんてあり得ない』とか『身の程知らず』とか聞こえてきた。 それを聞いてかどうかは分からないけど、突然レイスが俺の肩を引き寄せてきた。 「フタバは事情があって冒険者登録が遅くなっただけで実力は問題ない。それは俺たちが保証する」 と言うレイスの声が少し怒ってるように聞こえた。 見ると、受付のお姉さんというよりは周りに向けて言ったみたいだった。 レイスがそう言った瞬間、周りで俺を嘲笑っていた声が止む。 一言で納めるって、やっぱりレイスはすごいな。 「申し訳ありません、失言でした」 そう言ってお姉さんは頭を下げる。 「あ、いや、大丈夫です」 俺は頭を下げるお姉さんに慌ててそう言ってパタパタと手を振った。 そんな俺を見てお姉さんはニコッと笑う。 「ではこれで登録完了です。ダンジョンに入る際には十分に気を付けてください」 そう言ってお姉さんはギルドカードを返してきた。 「ありがとうございます。あ、お姉さんの名前教えてもらっても?」 「あ、大変失礼致しました、私はフレアと申します。何かあったらいつでも来てくださいね」 そう言ってフレアさんはニコッと笑った。

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