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第193話

(レイスside) また厄介なやつが出てきた。 スライムは攻撃力はさほど強くないけど、防御力が高い。 あの柔らかい体を駆使して打撃はもちろん、斬撃ですら受け流してしまう。 その為、倒すのに時間が掛かる。 出来れば相手をしたくないが、放っておくと増殖して手が付けられなくなる。 スライムは見つけ次第討伐が冒険者内での暗黙のルールだ。 ディルと二人でスライムの相手をしていると、後ろから何かが飛んできてスライムに突き刺さった。 よく見ると、フタバの投擲用のナイフだった。 ナイフの刺さったスライムは、ブルブルと震え始めてバシュと音を発てて消えた。 後ろからはフタバの『やった~!』と喜ぶ声がする。 スライムが消えた場所を見ると石が落ちている。俺はそれを拾った。 「何がドロップしたの?」 俺が石を拾うと、フタバがそう言って覗き込んできた。 「スライムの魔石だ」 「へぇ~、魔石がドロップするんだぁ」 そう言ってフタバは俺の手の上にある魔石をまじまじと眺めていた。 「……ところで、今何をしたんだ?あんな簡単にスライムを倒すなんて……」 そう聞くと、フタバはきょとんとする。 「何って、スライムの核を攻撃しただけだよ?」 そう言ってフタバは首を傾げる。 「……核?」 スライムの核を攻撃なんて、そんな話は聞いたことがない。 「え、もしかしてスライムの倒しか方知らない?」 そう言ってフタバが驚いた表情をする。 「その『核』っていうのは何なんだ?」 「えっと、スライムの中心に色が違う部分があるでしょ?」 そう言ってフタバはスライムを指差す。 フタバに促されてスライムを見ると、確かにスライムの中心部分の色が違っている。 「あれがスライムの核だよ。あれを攻撃すればスライムは倒せる」 「でもスライムに物理攻撃は効きにくい」 「うん、スライムに打撃は効かないよ。レイスたちの戦いを見てたら、この世界のスライムは斬撃にも強いみたい。だから突きならどうかなって思ったんだ」 『面もダメ、線もダメ、なら点だよね』とフタバは訳の分からないことを言う。 「…俺たちが戦う姿を見て、スライムの弱点を瞬時に把握したのか?」 「うーん、斬撃に強いってことは気付いたけど……って説明は後の方が良いかも」 そう言ってフタバは残りのスライムを相手にしていたディルの元に走っていった。 ………スライムの弱点なんて、誰も知らない。 これもフタバの世界では常識なのか? 俺はスライムを次々に倒すフタバに視線を移す。 その様子にディルもリオも驚いていた。 ………フタバの知識量が半端ない事は知っていた。いや、知っていたつもりだった。 俺たちはフタバを過小評価していたのかもしれない。 もしかしたら、フタバはこの世界の常識を覆す存在なのかもしれない。

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