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第199話
「へぇ、朝はフタバが作ったのか」
テーブルに並べた料理を見てディルがそう言う。
「昨日手伝えなかったから。勝手にメニュー決めちゃったけど大丈夫?」
朝食のメニューはフレンチトーストにサラダ、それとリオさんが作ったスープ。
パンとミルクと卵があったから何となく。
「大丈夫、旨そうだ」
そう言ってディルが笑った。
しばらくしてレイスも来て皆が席に着く。
料理も並べ終えて全員で『いただきます』と言って食べ始めた。
これも俺が習慣でしてたことだけど、今では皆に定着していた。
「あ、フレンチトーストにはお好みでハチミツをかけてね」
そう言ってハチミツの入った瓶を渡すとディルもレイスもハチミツをたっぷりかけてた。
前にホットケーキ作ったときに気付いたけど、この二人、意外に甘党だ。
「すごい、旨いなこれ。柔らかくてトロトロだ」
フレンチトーストを食べたディルがそう言って驚いた顔をする。
「フタバの世界には旨いものが多いんだな」
とレイスも感心してる。
……うーん、確かにこういうのも美味しいんだけどね。でも、そろそろ米が食べたい!
これは召喚者が陥る定番なんだけど、まさか俺が同じ経験をするとは思わなかった。
この世界は基本、パンが主食になっている。
話によっては普通に米があったり、どこかの国には存在していることもあるけど、この世界ではまだ米は出てきてない。
元の世界に居たときは、米も無ければ無いで良いと思ってたんだけど、いざ無くなるとやっぱり恋しくなる。あと出汁とか醤油とか味噌とか……どっかにないかなぁ。
朝食を食べ終えて諸々片付けると、俺はそれを無限収納にしまった。
「では出発しますよ」
リオさんの掛け声と共に、ダンジョン2日目が始まった。
5階層は序盤の割には意外と強い魔物が出てくる。
特にコボルトと狼系の魔物、シルバーウルフが多い。
コボルトは倒せるけど、シルバーウルフは機動力が半端なくて俺の投擲では太刀打ち出来なかった。
投擲は自分で相手の位置を把握して魔力を宿したナイフで攻撃するんだけど、シルバーウルフは【探知】で把握した側から移動してしまって攻撃することすら出来なかった。
シルバーウルフを倒すのに広範囲魔法、つまり数打ちゃ当たる戦法を使ったらリオさんに『場所を考えてください』と怒られた。
だって仕方なくない?あんなに早く動く敵を倒すなんて技術、俺には無いんだもん!
それをすんなり倒す皆がおかしいんだよ。
あ、でも、そのお陰で【障壁】が使えるようになったんだよね。
【障壁】まんま壁なんだけど、俺の中で攻撃を防ぐイメージが強化ガラスだったみたいで、咄嗟に発動させたら一枚板の透明なガラスっぽいのが出てきた。
リオさんには強度を上げるのと、周辺を囲えるようになる事、範囲を広げる事が課題にされた。
で、俺たちは5階層の探索を終えて6階層に来ていた。
「………この階層って魔物が居ないのかな?」
6階層に来てしばらく歩いてるけど魔物に一度も遭遇していない。
それどころか【探知】に一度も魔物が引っ掛からない。
ダンジョンにはノンアクティブの階層とかもあるから、ここがそうなのかな。
「気を付けてください。魔物が出ない階層はトラップが多くある場合がありますので」
『絶対に前には出ないで下さい』とリオさんに念を押された。
俺にはトラップの有無が分からないから、ここはリオさんに任せるしか無い。
リオさんの後ろに居れば大丈夫だよね。
そう思った時、突然俺の足元が光って魔法陣が現れた。
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