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第206話

(レイスside) 30階層 このダンジョンはリオの見立て通り、10階層ごとにボスが出現するみたいだ。 一気に30階層まで下りてきて、疲労が貯まった状態でのボス戦だ。 30階層のボスはメタルリザード。 名前の通り、トカゲ型の魔物だ。 その表皮は鉄のように硬く、剣が殆ど効かない。俺とは相性最悪な相手だ。 ここは魔法の使えるディルとリオに頼る他ない。 攻撃の要はディルだ。俺とリオはサポートに回る。 「ディル、気を付けろよ」 「分かっている。メタルリザードなんかに引けは取らないさ」 そう言ってディルは笑う。 ディルの実力ならメタルリザードくらいなら心配はいらないだろう。でも油断は禁物だ。 メタルリザードは既に戦闘体勢に入っている。 ディルも剣に炎を纏わせる。 俺も剣を構え、リオも戦闘体勢に入った。 メタルリザードが咆哮を上げると、周りに魔法陣が浮かび上がる。 「ディル様、土魔法が来ます。お気をつけ下さい」 リオがそう言うと、ディルが頷いた。 メタルリザードがもう一度咆哮を上げると、魔法陣から無数の石弾がすごい勢いで飛んできた。 その攻撃にリオが急かさず【障壁】を展開する。 その隙に俺とディルが前に出た。 近付くと流石に魔法攻撃をしにくいのか、メタルリザードは物理攻撃に切り替えてくる。 爪や尻尾の攻撃が飛んでくる。 メタルリザードの攻撃力はかなり強い。 一撃でも食らえば重症は免れない。 今回、俺はタンク役だ。 メタルリザードに決定打を与えられない俺は、ディルが攻撃しやすいようにメタルリザードの攻撃を受け流していた。 リオも後方から火魔法で援護していた。 メタルリザードの弱点は喉元。 そこが見えさえすればディルが攻撃出来る。 「ディル、俺が隙を作る。その隙をつけ!」 「レイス、無理はするなよ」 「分かっている。リオ!メタルリザードの隙を作る、援護を頼む!」 後方に居るリオにそう叫ぶ。 「分かりました」 そう言うと、リオは魔法陣を展開させる。 火弾がメタルリザードに向かって放たれた。 リオが放った火弾はメタルリザードによって防がれる。 俺はメタルリザードが火弾に気を取られてる隙にディルの左側に移動した。 途中で俺の存在に気付いたメタルリザードが俺を追って体の向きを変えた。 この向きならディルから喉元が見える。 「ディル!!」 そう叫んだ瞬間、メタルリザードの爪が俺に向けて振り下ろされた。 俺は辛うじてその攻撃を受け止める。 でも真上で受け止めたせいで、その重さに膝をついてしまう。 「レイス!?」 「俺の事は良い!殺れ!」 俺がそう言うと、ディルの表情が変わる。 その瞬間、ディルの剣が纏う炎がより一層大きくなった。 「レイス、巻き込まれるなよ!」 ディルがそう叫ぶと、剣を振り下ろした。 その瞬間、ディルの剣が纏っていた炎が刃になってメタルリザードに放たれた。 俺はメタルリザードの爪を押さえてた力を少し抜いて屈む。 ディルの攻撃は俺のすぐ上を通っていった。 どうなったのか、俺の位置からは見えない。 上から緑の液体が降り注ぐ。 しばらくして俺の上にあるメタルリザードの足が退かされた。 「レイス、大丈夫か?」 そう言ってディルが手を差し伸べてくる。 俺がその手を取ると、ディルがメタルリザードの足の下から引っ張り出してくれた。 メタルリザードを見ると、上手く首が切り落とされていて、近くに首も落ちている。 俺はと言うと、近くに居たせいでメタルリザードの血を浴びて血塗れ状態だった。 「……盛大に浴びたな」 そうディルが少し苦笑を漏らしながら言う。 「近くに居たんだ、仕方ないさ」 そんな事を話してると、メタルリザードが霧散した。 その瞬間、部屋の奥に下に向かう階段と転移魔法の魔法陣が現れた。 俺はリオの水魔法を使ってメタルリザードの血を洗い流すと、下層に下りる階段に向かった。

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