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第210話

俺は意識を集中させてリオさんの魔力を思い浮かべた。 一番身近で感じてた魔力だ、思い浮かべるのは容易かった。 次に俺は転移トラップで飛ばされた時の感覚を思い出す。 出来るだけ鮮明に、後はリオさんの魔力に向けて移動するイメージ。 無魔法【転移】 頭の中で唱えた瞬間、体が引っ張られる感覚がする。 それが収まってゆっくり目を開けると、目の前にレイスたちが居た。 レイスたちは何故か剣を構えていたけど、俺はそんな事より【転移】が成功したことを歓喜の声を上げた。 やったぁ!!ついに念願の転移魔法を習得したぞ! 「フタバ!!」 「フタバさん!!」 俺が【転移】に喜んでいると、ディルとリオさんが駆け寄ってきた。 「フタバ、無事だったんだな」 そうディルが言う。 「うん、ごめんね心配かけて」 「フタバさん、お怪我はないですか?」 そうリオさんが聞いてくる。 「大丈夫です」 俺がそう言うと、リオさんはホッとしたように笑った。 ディルたちと話していると、ふと少し離れた場所に居るレイスに気付いた。 俺がディルとリオさんの間を抜けてレイスに近寄った。 「……レイス?」 レイスは近寄っても名前を呼んでも下を向いたまま無反応で、俺はどうしたんだろうと思ってもう一歩近付いた。 その瞬間、レイスに抱き締められた。 「レ、レイス!?」 俺は突然抱き締められて驚いて慌てた。 「………無事で、良かった」 辛うじて耳に届くほどの小さな声。 その声は今にも消えそうで、震えていていた。 少し苦しいくらいに抱き締められる。 ………相当心配掛けちゃったんだな。 そう思って、俺はレイスの背中に手を回した。 「うん、ごめん」

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