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第219話

(レイスside) 「あれがアルザイルの勇者か……」 そう言ってディルが依ってくる。 「そうみたいだな」 俺は離れた場所で話をしているフタバたちに視線を向けた。 確か、勇者の水上 廉に双剣使いの高峰 蒼太だったか…… 三人を見ていると、フタバが見たことない笑顔で笑う。 流石にここまでは何を話してるのか聞こえない。 ………元の世界の話でもしてるんだろうか。 フタバの世界の話なんて、あの三人にしか出来ない。 どう頑張っても、俺には出来ない話…… 俺はギュッと手を握りしめた。 「……レイス」 ディルが真剣な表情で見てくる。 「なんだ?」 「もう気付いてるんだろ、フタバの事」 「…なんの事だ」 「誤魔化すな。好きなんだろ、フタバの事」 俺はそれに答えることは出来なかった。 そんな俺に、ディルが小さくため息をつく。 「言わないのか?」 「……言ってどうする?」 「どうするって、フタバなら応えてくれるんじゃないか」 「…………もしそうだとしても、俺はフタバに伝えるつもりはない」 俺がそう言うと、ディルは顔をしかめる。 「……まだあの事を気にしてるのか?」 そう言うディルに、俺は答えられない。 「あれはレイスのせいじゃないだろ」 「だとしても!………そうだとしても俺は、もうそういう相手は作らない」 俺はディルに視線を向けた。 ディルは悲しそうな表情で俺を見てくる。 「…フタバは違う世界の人間だ。フタバを俺の都合で巻き込む事は出来ない」

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