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第224話

(水上side) 勢いで外に出たは良いものの、建物の外は皆パニックになってて俺たちもどうしたら良いのか分からなかった。 遠くにはワイバーンっていう魔物の群れが見える。 風城曰く、ワイバーンは群れで行動するのと、飛ぶことで倒しにくい相手ではあるけど、単体ではそんなに強い魔物ではないらしい。 かといってそれで安心することは出来なかった。 なにせ俺たちは、ほんの数日前まで魔物と対峙したことすら無かったし、魔物を倒したのは今日が初めてだ。 それも城の騎士に援護されながらスライムやコボルトなんかの低ランクの魔物をやっとの思いで倒した。 そんな俺たちが外に出てるのは、やっぱり間違いじゃなかったんだろうか。 そう思って、俺は風城を見た。 風城はキョロキョロと辺りを見回してる。 多分、さっき出ていった仲間の人を探してるんだろう。 風城の仲間は見た感じ、とても強そうだった。 そんな人たちと行動してたから、風城はこうして落ち着いてられるのかな。 ……いや違う。 風城は最初から落ち着いていた。 初めてこの世界に召喚された時も、今だって…… もともと風城には違和感があった。 異世界召喚なんていう非現実的な現象にも落ち着いていて……いや、あれは喜んでたのかな。 城で王様たちにステータスを教えた時も、風城が嘘のステータスを伝えていた事には気付いていた。 最初は俺たちより低いのかと思ったけど、風城が城を抜け出して、今日再会したことで確信した。 風城は強い、俺たちよりもはるかに…… それがどういう意味なのか分かってたから風城は城から逃げ出したんだ。 「水上、危ない!!」 町民の避難を手伝いながらそんな事を考えてると、そう叫び声が聞こえて体に衝撃が走った。 突然の衝撃に踏ん張りが効かなくて倒れ込んでしまった。 何が起こったのかと思って見ると、風城が俺に覆い被さっていた。 その風城の向こうには翼竜にも似た生き物が『ギャアギャア』と鳴き声を上げていた。 多分、これがワイバーン。 俺はワイバーンの見た目と迫力に、動けなくなってしまった。 風城が俺を庇うように前に移動した。 風城を見ると、風城はワイバーンを睨み付けている。 ただその睨みがワイバーンに通じる訳もなく、既に俺たちに目をつけていたワイバーンが奇声を上げて襲い掛かってきた。 俺はワイバーンの攻撃から守るように目をギュッと瞑って身を縮めた。 でも何時まで経っても何も無くて、俺は恐る恐る目を開けた。 目を開けると、目の前にワイバーンの顔がある。 それに一瞬驚いたけど、ワイバーンと俺たちの間にガラスの壁みたいなのがあるのに気付いた。 「大丈夫だから、そのまま下がって」 呆然としている俺に、風城がそう言って肩を叩く。 俺はそれにハッとした。

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