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第229話
名前を呼ばれて振り返ると水上と高峰が居て、水上が手を振ってる。
俺はレイスをチラッと見た。
「行ってこい。俺はここに居るから」
そう言ってレイスが笑う。
「うん、ちょっと行ってくる」
俺はレイスに断りを入れると、二人に駆け寄った。
「無事合流出来たみたいだね」
そう水上が言う。
「うん、結構前線に居た」
「前線って…あの魔物がウジャウジャ居た所に居たってことか?」
そう高峰が少し驚いたように言う。
「うん、そうなるね」
「あの人ら、結構強いんだな」
そう言って高峰がレイスに視線を向けた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(高峰side)
風城が一緒に行動してるのは全部で三人。
黒髪のローブを着た奴と金髪イケメン。
あとあそこの赤髪のイケメン。
ちゃんと紹介されてないから名前は知らないけど、風城の話ではあの赤髪が城から逃げ出した風城を助けたらしい。
そんな事を考えながら赤髪を見てると、赤髪がチラチラとこっちを見てるのに気付いた。
視線を追うと、風城に行き着く。
………風城の事を気にしてるのか。
俺たちの事を不信がってる様子は無いけど、警戒はしてるって感じか。
……いや、それよりは見守ってるって感じか。
「……なぁ、風城はもう城には戻ってこないのか?」
「え?」
「城の方が不自由しないだろ?」
そう言うと、風城の表情がスッと真顔になる。
「戻るつもりはないよ。確かに城に居れば不自由しないかもしれない。でも俺は飼い殺しなんて御免だし、あの人たちに従うつもりも無いんだ。……それに、俺は今がすごく楽しいんだ。限られた自由なんて要らない。少しくらい辛くても今が良いんだ」
そう言って風城は微笑む。
風城の答えなんて分かってた。
これは俺のただのエゴ。
風城が大丈夫だと自分が安心したかったから。
いつまでも風城の事を気にするなんて御免だしな。
そんな事を考えていると、水上にポンと背中を叩かれた。
水上を見ると、水上は何も言わずに微笑むだけだった。
「あ、二人が帰ってきた」
不意に風城がそう言う。
風城の連れが居る方を見ると、さっきまで居なかった黒髪と金髪が戻ってきていた。
「俺、そろそろ皆の所に戻るよ」
「……あぁ」
そう言って俺は頷いた。
「そういえば、二人はいつまでいるの」
「明日の朝にはここを立つ予定だよ」
風城に水上が答える。
「………そっか」
明日立つと聞いて、風城が少しシュンとする。
「そんな顔するな」
そう言って俺は風城のおでこにデコピンする。
風城はおでこを押さえてきょとんとした。
「もう会えない訳じゃないだろ」
「そうだよ。現にこうして会えたじゃん」
横から水上がそう言うと、風城の表情がパァと明るくなる。
「うん、そうだよね。また会えるよね」
そう言って風城は嬉しそうに笑う。
「俺、明日は見送りにくるから!」
『それまで帰っちゃダメだよ』と言う風城に、俺と水上は頷いた。
その後風城は『じゃあまた明日ね』と言って、手を振りながら三人の所に戻っていった。
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