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第230話

次の日の朝、俺は水上と高峰を見送る為にギルドまで来ていた。 「二人とも気を付けてね」 俺がそう言うと、二人は顔を見合わせる。 その後、高峰が盛大にため息をついた。 「それはこっちの台詞だと思うけどな」 「え、何で!?」 「お前、気付いてないようだから言うけど、結構危なっかしいぞ」 高峰は少し呆れ気味に言う。 危なっかしいってどういう意味なんだろう。 俺は高峰の言ってる意味が分からなくて首を傾げた。 そんな俺を見て、高峰がまたため息をつく。 「あの人たちも苦労するな」 そうボソッと呟く高峰に、俺は更にハテナマークが浮かんだ。 「まぁ、気を付けるに越したことはないよ」 俺たちのやり取りを見ていた水上がクスクスと笑いながら言う。 笑っていた水上の表情がスッと真顔になった。 「この世界は俺たちの常識には当てはまらないからね。人間関係も含めて、色々と気を付けた方が良い」 「……そうだね」 「俺たちはこの世界の事なーんも知らないからな。冒険者として動いてる風城は別として、俺と水上は今回初めて城から出たしな」 ………俺もあまり動いてないんだけどな。 まぁ、それは良いとして…… 「お互いに情報共有出来ればいいんだけど……」 俺がそう言うと、皆考え込んでしまう。 「この世界にはスマホとかも無いからね」 そう言って水上が苦笑する。 「この世界の連絡手段って手紙くらいだろ?タイムラグが半端ないな」 「手紙を書いても届くかどうかも分からないしね」 と高峰の言葉に水上が返す。 多分、二人が手紙を書いても相手に届くことはないと思う。 俺が二人に送っても、届かない。 「……うーん、何か考えとくよ。魔法を駆使したら出来るかもしれない」 俺がそう言うと、二人がじっと見てきた。 「な、なに?」 二人に見られて、俺は少し引いてしまう。 「お前、やっぱかなりレベル高いだろ」 そう高峰が言う。 「…え…なん、で?」 俺は一瞬、狼狽えてしまう。 「連絡手段なんて、普通は魔法でなんとかしようなんて思い付かないだろ。それが思い付くってことは、それが出来るってことだ。そんなの高レベルじゃなきゃ出来ないだろ」 「あ、それ俺も思った」 と水上も便乗する。 「風城って、最初から俺たちより強かったよね?じゃなきゃあの城から逃げ出せないと思うし」 そう言って二人は『どうなの?』と言うような目で見てくる。 俺は迷った挙げ句、二人の圧に負けて自分のレベルの事、職業の事を話した。 俺の話を聞いた二人はポカンとしていた。 「……ちなみに、今は?」 水上がどこか恐る恐る聞いてくる。 「……………75」 俺が呟くように言うと、二人はまたポカンとした。 しばらく沈黙が続いた後、高峰がため息をついた。 「……まぁ、お前が強いのは何となく分かってたし、お前なら大丈夫ってのも分かった。それにあそこに居るお前の仲間も信頼出来るんだろ?」 そう言って高峰が奥に視線を向ける。 俺もその視線を追って見ると、離れた所にレイスたちが居た。 「うん」 高峰の言葉に、俺は頷いた。 「それに、風城に何かあったら俺たちが何がなんでも駆けつけるから」 そう言って水上が笑う。 俺はその言葉が嬉しくて笑ってしまった。 「俺も、二人に何かあったら絶対駆けつけるよ」 そう言うと、俺たちは三人で笑い合った。 「そろそろ行かなきゃ」 水上がそう言って外を見る。 ……あ、もうそんな時間なんだ。 そう思うとちょっと寂しくなる。 「…そんな顔しないでくれ」 見ると、水上がフッと笑う。 「また会えるって言っただろ?それに、俺たちがピンチになったら助けてくれるんじゃないの」 そう言って笑う水上に、俺は気持ちが浮上した。 「うん、そうだね。ごめんもう大丈夫」 そう言って俺も笑い返した。 「じゃあ、また」 沈黙の後、水上がそう言う。 高峰もフッと笑った。 「うん、また」 そう言って俺たちは、三人で拳を突き合わせた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ (??side) 「何!?レイス殿下が居ただと!?」 「はい、レオーネ、ミラの町に姿を見たと連絡がありました」 これでようやく、ようやく私の悲願が叶う。 そう思うと自然と笑みか溢れた。 「今すぐ書簡を送れ!くれぐれも内密にな」 「はっ!」 従者は頭を下げると、私の前から立ち去った。

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