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第235話
ここは低ランク冒険者用のダンジョンだから魔物自体は弱い。
魔物自体はこの3人の敵ではないからさくさく進んでいく。
ただ、魔物の出現率が半端なかった。
魔物は倒したと思ったらすぐに次の魔物が来る。
その為に、俺は気が休まる暇がなかった。
順調に進んで、俺たちは3階層まで来ていた。
ここまではアンデット系の魔物は出てきていない。
ただいつ出てくるか分からないアンデットにビビってた俺は、魔物が出現する度に緊張して気を張っていて既にヘトヘトだった。
「仕方ありませんね、ここで少し休みましょうか」
俺の様子を見かねて、リオさんがそう言う。
通路の少し先に窪んでる所があって、そこにリオさんが結界を張って休む事になった。
岩に座ってホッと息を吐く。
ただ【探索】は切ってないから魔物が出現する度にそっちが気になってやっぱり気が休まらなかった。
「そろそろ行きましょうか」
しばらく休憩して体力が少し回復した頃、リオさんがそう言う。
やっぱりまだ行くんだね……
そう思って、俺はため息をついた。
3階層も半ばに差し掛かって、相変わらず魔物が大量に出現する。
でもウルフ系やスライムなんかの低ランク魔物ばかりだ。
順調に進んでいると【探索】に数体の魔物の反応があった。
俺が魔物を感知したと同時に3人が足を止めた。
「どうしたの?」
そうレイスに聞いてみる。
「………本命の登場だ」
そう言ってレイスが顔をしかめた。
本命ってなんだろ?
そう思って、俺は前方を見た。
またウルフ系か何かだと思った。
ただ今回の魔物は他と違った。
俺はその姿を見て固まった。
シルエットでも分かる。
呻き声を出しながら独特の動きで近付いてくる。
俺は咄嗟に前に居たレイスにしがみついた。
それはどんどん近付いてきて、姿がはっきり見えてくる。
俺は更に強くレイスにしがみつく。
ゾンビは完全に人の姿をした動く死体。
皮膚は爛れ、個体によっては欠損部分があったりとかなりグロテスクな見た目をしている。
感覚も痛覚も感情もなく、ただ本能のままに動く。
ゾンビを倒すには頭を潰すか燃やす他にこれといった方法がない。
俺が最も苦手とするアンデットだ。
「ちょっ、フタバ!?動けないから少し離れてくれ」
必死にしがみつく俺をレイスが離そうとする。
「無理!!」
そう言って俺を離そうとするレイスに抗う。
そんな事をしてるうちにゾンビの呻き声が耳に入って、俺は完全にパニックになった。
「やだ!!やだ!!来ないで!!」
俺はレイスを引っ張りつつ後退る。
「フタバさん、何をしてるんですか!?早く倒してください!」
とリオさんが言う。
そう言われて、俺はゾンビをチラッと見る。
ゾンビの姿が視界に入った途端、ゾワッと悪寒が走った。
「無理無理無理!!」
もうやだ!!ホント無理!!
「フタバ、落ち着け!」
そうレイスの声がするけど、この状況で落ち着いてなんていられない。
ゾンビは俺たちの声に反応してか、動くスピードを上げて向かってきた。
「ひっ!?」
やだやだやだやだやだ!!
俺の頭の中にはゾンビを抹消させる事しかなかった。
他の事なんて考える余裕なんて無かった。
必死で手をゾンビにかざす。
火魔法【爆炎】
俺はゾンビに向けて魔法を放った。
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