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第239話

今日は俺たちがレオーネに帰る日だ。 リオさんは一晩寝て少し回復したみたいだけど、まだ少し辛そうだった。 迎えの馬車とはギルドで待ち合わせだ。 俺たちは支度を終えると早速ギルドに向かった。 ギルドについてしばらく、迎えの従者の人が来た。 俺たちは馬車に荷物を乗せたりと帰りの支度をする。 支度し終えると俺たちはフレアさんやドランさんに挨拶をしてミラの町を後にした。 何だかんだであっという間だったな。 また来れると良いな。 ミラを出発して三時間くらい進んだ所で、俺たちは野営の準備をしていた。 来たときと同じようにテントを張って、夕飯を作る。 リオさんはディルの『しばらくは大人しくしていろ』という命令を守って椅子に座っていた。 そんなリオさんが、ハラハラとした表情をしていた。 従者の人も同じようにハラハラとしている。 その視線の先には料理をしようとしているディルがいた。 ………こんなハラハラしたリオさん見たことない。 まぁそれは仕方ないのかな……あれは俺でも怖い。 そう思って、俺もディルを見る。 ディルは今、夕飯を作ろうと野菜をナイフで切ろうとしていた。 台の上に野菜を乗せて、ディルはナイフを思い切り振り下ろす。 台の上の野菜は、振り下ろされたナイフが擦ったことによる反動で勢い良く飛んで地面に落ちた。 落ちた野菜を拾ったディルが『何で切れないんだ?』と首を傾げていた。 そう言えば、いつもリオさんが率先して料理をしてたから、ディルが料理してるところは見たことが無かった。 まさかこんな典型的な料理オンチだったなんて……… 見ていると、ディルはまた野菜を飛ばしていた。 「……ディル、食材は押さえないと切れないよ」 「そうか」 俺がそう言うと、ディルは素直に野菜を押さえた。 いや、押さえるというより掴んだ。 ディルはそのまま切ろうとして、危うく指まで切りそうだった。 「わぁ!ちょっと待った!」 俺は慌てて止めに入る。 もうリオさんと従者の人はハラハラを通り越して顔面蒼白だ。 「今日は俺が作るよ」 「フタバが?」 「うん」 俺はコクコクと頷く。 「……じゃあ、任せる」 そう言ってディルは台の前を開けてくれた。 その様子を見て、リオさんと従者の人はホッと息を吐いていた。

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