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第240話
俺が作ると言ったは良いけど、何作ろう。
メインは肉料理が良いんだろうけど、この世界の肉料理って基本ステーキなんだよね。
「……ねぇディル、ディルは何か食べたいのある?」
そう聞くとディルが悩みだす。
「フタバの世界の料理が食べたい」
ディルは悩んだ結果、そう答えた。
「……俺の世界の?」
って何だ!?
俺の世界の料理って、手持ちの食材で出来るのか?
この世界に無い調味料だってあるし。
なんか、一番困る答えなんだけど………
そう思ってチラッとディルを見ると、ディルは期待で目をキラキラさせている。
………これは今更断れないよね。この材料で作れるもの………
俺は台の上に置かれた食材を見る。
肉の塊に数種類の野菜。あとはパンとお酒。
調味料は塩、胡椒、砂糖、お酢。
後はよく分からない調味料が数種類。
………これで何が作れるんだ?
俺の世界のこういう時の定番はカレーだけど、カレー粉が無いし……それより肝心の米が無い。
肉料理で、今ある材料で作れて、パンに合うもの………
俺は食材とにらめっこをしていると、ポンッとあるものが浮かんだ。
これなら作れるかも!
そう思って、俺は早速調理に取り掛かった。
「俺も手伝う」
そう言ってディルが横から覗き込んでくる。
…………ディルが出来そうな作業
「じゃあ、肉を細かく刻んでくれる?」
料理オンチのディルでも出来そうな作業を思い付いた俺はディルに指示を出す。
「……肉を刻む?」
俺の指示が理解出来ないみたいで、ディルが首を傾げる。
「……こうやって、ナイフで肉を叩くように」
手本を見せるとディルは分かったと頷いて、肉を細かく刻み始めた。
ディルは王族だから、多分料理というものをあまりしないんだろう。普段はリオさんとかが作ってくれるし。
ディルに料理を教える人が居なかっただけで、元々器用なディルならちゃんと教えれば上手く出来るようになると思う。
ディルを見ると楽しそうに肉を刻んでいて、思わず笑ってしまった。
俺はディルが肉を刻んでる間に野菜を切っていく。
玉ねぎに似た野菜をみじん切りに、パンを削ってパン粉に。
それが終わると付け合わせに使う野菜とスープに使う野菜を切っていく。
「……何を作ってるんだ?」
野菜を切り終えた頃、薪拾いから帰って来たレイスが覗き込んできた。
「ハンバーグだよ」
「………ハン、バーグ?」
『何だそれ?』とレイスは首を傾げる。
「出来てからのお楽しみだよ」
そう言ってみたけど、ただ説明が面倒くさいだけなんだけどね。
そう言うと、レイスが『ふーん』と俺たちの作業を眺める。
「……俺も手伝う」
そう言ってレイスは腕捲りをした。
「じゃあスープをお願いしていい?」
「分かった」
レイスは頷くと、拾ってきた薪を組んで火を起こそうとした。
それを見て、俺は火魔法で薪に火を着けた。
レイスが少し驚いた後、笑ってお礼を言ってきた。
「フタバ、これくらいでどうだ?」
と肉を刻んでいたディルが言う。
見ると、肉は立派なミンチになっていた。
店で売ってるミンチみたいに均等に引かれてる訳じゃ無いけど、ハンバーグだからこれくらい肉感があった方がいいよね。
「うん、十分だね。ありがとう」
俺はディルからミンチを預かると、器にそのミンチと玉ねぎのみじん切り、パン粉、卵を入れて塩コショウで味を整える。
ちなみに俺は玉ねぎは生で入れる派。
その方が玉ねぎの甘味が感じられて好きなんだよね。
出来上がったタネをハンバーグの形に整えて両手でぺったんぺったんしていく。
その様子を皆が興味津々で見ていた。
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