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第260話
本当にたまたまだった。
たまたまディルの執務室の前に来ていた。
別に用があったわけじゃないけど、何となく一人で居るのが寂しかった。
レイスが居なくなってから、たまに一人で居るのが堪らなく寂しくなる。
そんな時はディルかリオさんに無理を言って一緒に居させて貰っていた。
一緒にっていっても、同じ部屋に居させて貰うだけ。
人の気配がするだけで、俺は安心出来た。
リオさんが執務室に居るときはいつも防音結界が張られている。
結界が張られていると、外の音も遮断してしまうから、普通は通信用の魔道具を使って連絡を取るらしい。
でも俺には魔法耐性があるから、俺が結界に触れると結界が消える。
リオさんが俺は結界を消して普通にノックしてくれれば良いと言った。
俺はリオさんに言われた通り、扉に触れてからノックしようとした。
ノックしようとした瞬間、
『フレデリア皇女に着けられた隷属の首輪を何とかしなければならない』
そう聞こえた。
………隷属の首輪?
フレディに隷属の首輪が着けられてる?
『隷属の首輪』は異世界系の話にたまに出てくる。
首輪を媒介に、魔力や毒薬を使って首輪を着けた相手を意のままに操る。
話によっては隷属の首輪は禁忌とされてる程、危険な魔道具。
………そんなものがフレディに?一体誰が……
そう思って、俺はある人が浮かんだ。
………国王?
皇女であるフレディに隷属の首輪を着けるなんて、そんな容易い事じゃない。
でも国王なら簡単なんじゃないか。
………もしかして、レイスが突然アルザイルに戻ったのもそのせいなんじゃ?
そう思った瞬間、とてつもなく怒りが込み上げてきた。
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