264 / 269
第262話
(ディルside)
リオの扉を開けた瞬間、物凄い魔力が流れ込んできた。
その魔力の波に扉から離れた場所に居る俺ですら煽られた。
見ると、扉のところにフタバが立っていた。
……この魔力のフタバのものなのか。
フタバはこれ程までの魔力を持ってたのか。
そんな事を考えていると、フタバがリオに掴み掛かって、体からまた魔力が溢れ出した。
このままじゃリオが危ないと思って、俺はフタバを気絶させた。
フタバが倒れると、体から溢れていた魔力も収まって俺はホッと息を吐いた。
俺は取り敢えずフタバを隣の部屋の仮眠用のベッドに運ぶ。
その後フタバの魔力に当てられて座り込んでいたリオをソファに座らせた。
「……申し訳ありません」
ソファに座らせると、リオがそう言う。
……顔色が悪いな。
あれだけの魔力をもろに浴びたんだ、無理もない。
「しばらく休んでいろ」
そう言うと、リオは『すいません』と謝ってきた。
俺もリオの向かいに座る。
「リオ、さっきのはどういう事だ?」
ソファに座ると、俺はリオにそう聞く。
さっきリオはフタバに俺たちの話を聞かれていたと言った。
「フタバさんは『フレディに隷属の首輪が着けられたってどういう事』と言っていました。私たちの話の内容を聞かれたかと……」
そう言うリオに、俺は頭を抱えた。
フタバに話すつもりは無かった。
それがレイスとの約束でもあった。
「………どうしたら良いと思う?」
俺は答えが出せず、リオに聞いてみる。
「……知られてしまったからには話した方が宜しいかと」
中途半端に知られたからには、もう話すしかないとリオは言う。
それしか無いと俺も思った。
でもレイスとの約束で、話して良いものかと悩んでいた。
ただ、下手に隠してフタバに暴走されてもこちらに打つ手が無い。
「……レイスには悪いが、それしか無いか」
そう呟いて、俺はため息をついた。
「リオ、俺はこれから父上のところに行ってくる」
そう言って立ち上がると、リオも立ち上がろうとした。
「私も……」
「良い、リオは休んでいろ」
「……しかし」
「まだ顔色が悪い。リオはこの後は休みだ」
ちゃんと報告する事を約束すると、リオは渋々承諾した。
「そうだ、フタバに魔力制御の魔術具を着けといて貰えるか」
そう言うと、リオが頭を下げた。
「畏まりました」
魔術具なんて、フタバには気休めにしかならないろう。
でも無いよりはマシだと思う。
どのみち、フタバに暴れられたら誰も敵わないしな。
そんな事を考えつつ、俺は父上の元に向かった。
ともだちにシェアしよう!