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第266話

(ディルsSide) 「分かった、皆でレイスを助けに行こう」 そうフタバが言う。 「当然、私も行きますよ」 横からリオもそう言う。 「じゃあ、早速行くよ」 そう言ってフタバが俺たちの手を握ってきた。 フタバが俺たちの手を握った瞬間、足元に魔法陣が浮かび上がった。 「は!?」 「え!?」 突然の事で、俺とリオは成す術なく魔法陣から出る光に包まれた。 光に目が眩み、咄嗟に目を閉じる。 しばらくして、光が消えたのを確認してゆっくりと目を開けた。 「………ここは?」 周りを見回してみると、さっきまで居た執務室ではなく外に居た。 後ろには森が広がり、目の前には高い塀があって、塀の上の方にかろうじて城の屋根が見えた。 「……フタバ、ここってもしかして……」 「アルザイルの王城」 フタバがサラッと言う。 「フタバさん、転移魔法を使ったんですか!?」 「この方が手っ取り早いからね」 そう言いながらフタバは城壁に近付いていく。 俺もリオもそれを目で追った。 「しかし、何の準備もせずにアルザイルの王城に乗り込むなんて無謀過ぎる!」 そう言う俺をフタバはチラッと見る。 「"そっち"の準備なんて要らないよ。それに準備し終えるまで待ってたら手遅れになる」 そう言いながらフタバが城壁に手を当てた。 フタバの言う『そっち』というのは、恐らく国としての準備の事だ。 国としての準備は、入国許可からアルザイル王に謁見というまでの流れを全て許可を取らなくてはならない。 その許可を取ろうと思ったら数日は掛かる。 許可が出なければ下手をするとアルザイルへの入国すら出来ない。 「だからと言って、転移魔法使ってまで来る必要な無いだろう!?」 そう言うと、フタバが俺を見据える。 「……嫌ならここで帰れば良い。元々俺一人でするつもりだったし」

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