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第2話
「焼きそばパンってある?」
お昼を買いに売店に来ると、おばちゃんにそう声を掛けた。
「あぁ、ごめんね。さっきの人で売り切れちゃったよ」
商品を探した後、おばちゃんが申し訳なさそうにそう言った。
「そう。じゃあ、適当にちょうだい」
こんなのはいつものことだ、もう慣れた。
「こんなのしかないよ?」
そう言って差し出されたのは、あきらかに売れ残りのコッペパン。
別に買いに来るのが遅いわけじゃないけど、いつもそんな売れ残りしか買えない。
「それで良いよ」
そう言ってコッペパンを受け取ろうとした時、目の前にスッと焼きそばパンが出された。
「これあげる」
声のする方を見ると、その人はニコッと笑ってこっちを見ていた。
……こいつ、確か生徒会長の木崎 秋哉。
入学式で新入生代表を努めて、そのルックスと人当たりの良さで一年生では異例の生徒会長に選ばれた。生徒たちからは『一年生生徒会長』って呼ばれてる。
「ごめんね、これが最後だったみたいで」
『どうぞ』と言われ、焼きそばパンを差し出される。
「………いらない」
そう言って、俺はパンを買わずにその場を離れた。
「ねぇ君、中村 緋桜くんでしょ?」
そう言って木崎が追いかけてくる。
「ねぇ緋桜くん、待ってよ」
こいつはなんで着いてくるんだ?
そう思って、俺は歩くスピードを上げる。
「ねえってば!緋桜くん!」
それでも木崎は俺に着いてきた。
「うるさい!着いてくるな!」
我慢の限界だった。俺はしつこく着いてくる木崎にそう叫んだ。
木崎もそれに驚いたのか、足を止めた。
俺はその隙に走って逃げた。
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