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第12話

(佐々木side) 突然秋哉から電話が掛かってきた。 普段は電話なんて掛かってこないから、どうしたんだろうと思った。 電話の内容は迎えに来てほしいって事と、家に医者を呼んでほしいという事だった。 迎えに来てほしいというのは分かるけど、医者を呼んでほしいっていうのはどういう事だと問い詰めると、秋哉は自分じゃないと言った。 俺は訳が分からず、取り敢えず秋哉を迎えに行くことにした。 学校に着くと既に秋哉が校門の前で待っていて、その手には何かを抱えていた。 近付くと、それが人だと分かった。その人を抱えたまま車に乗り込んでくる秋哉に『彼は誰だ』と聞いたら『友達?』と疑問形で返ってきた。 秋哉が抱えていた彼を見ると、服が乱れて、かなり衰弱してるように見えた。 秋哉が医者を呼んでくれと言った事に納得した。 家に着いて彼を呼んでいた医者に任せて、事情を聞くために秋哉の元に向かった。 彼の名前は中村 緋桜くん。秋哉と同学年らしい。 彼の話をしていた秋哉は、終始険しい顔をしていた。 話をしていた秋哉が最後に『俺たちの前に学校を出ていった生徒を調べてほしい』と頼まれた。 最初は何故そんな事を頼むのかと思ったけど、彼の診察を終えた医者の話を聞いて納得した。 彼の服が乱れていたのも、衰弱していたのも、彼が誰かに襲われたからだったんだ。 秋哉もそれを察していて、だからあんなに機嫌が悪かったのか。 秋哉に頼まれた事を調べて、その結果と彼の治療が終わった事を秋哉に伝えた。 その時に、彼の事をどうすのか聞いてみたら一緒に住むのも良いとか言い出した。 どうやら秋哉は彼の事をかなり気に入ってるみたいだ。秋哉に気に入られた彼を少し同情する。 その後、彼が気付いたみたいで秋哉はしばらく彼と話をしていた。 彼と話終えて部屋から出てきた秋哉は、また険しい顔をしていた。 「佐々木」 部屋から出てきた秋哉に呼ばれる。 「しばらく、緋桜から目を離さないでくれ」 そう真剣な顔で言ってくる。 「それは命令?それもとお願い?」 「命令………って言いたいとこだけど、お願いかな」 そう言って、秋哉は少し困ったように笑った。 「今の緋桜はどこか危なっかしい。」 『何もなければ良いい』と秋哉は言う。 そんな秋哉に俺は『分かった』と答えた。 夜中、彼の部屋にそっと入った。 俺は眠っている彼の顔を覗き込んだ。 彼の寝顔は、目元にうっすらと涙の痕が残っていた。 ……泣いていたのか。 男に襲われたなんて、そんな事があったら無理もないか。 秋哉が言っていた『危なっかしい』っていうのは、何となく理解出来た。 今までの彼の事は知らないけど、今の彼は今にでも消えてしまうんじゃないかと錯覚してしまう。 しばらくは目を離さない方が良いな。

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