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第16話
(佐々木side)
俺はフラつきながらバスルームに向かう緋桜くんを見てるしか出来なかった。
…………相当トラウマになってるみたいだな。
秋哉さんの話だと、元々他人を拒絶している伏があったらしい。
それが犯されたことで、触れられるのすら拒絶するようになった。
秋哉さんが俺を見張りに立てた理由が分かった。今の緋桜くんは危うすぎる。
そう思いながら、俺はバスルームのドアを眺めていた。
緋桜くんがバスルームに入って、かれこれ20分近く経った。
………時間が掛かってるな。中で倒れてたりしないよな?……これは様子を見た方がいいのか?
そう思ってどうしようかと悩んでいると、バスルームのドアが開いて緋桜くんがフラつきながら出てきた。
手を貸したい衝動に駆られるけど、緋桜くんはそれを嫌がるから俺はグッと堪えた。
緋桜くんはなんとかベッドに辿り着いて、そのまま座り込む。
バスルームから出てきた緋桜くんは明らかに顔色が悪い。
「大丈夫?」
そう聞いてみると、緋桜くんは小さく頷いた。
「………大丈夫、です」
そう辛うじて聞き取れる声で言う。
ひどい顔色をして、明らかに大丈夫そうじゃない。それは緋桜くん自身も分かってる筈なのに、この子は何を聞いても大丈夫と答えるのか。
「………あの……」
そんな事を考えていると、緋桜くんが声を掛けてきた。
「どうした?」
「…………俺、いつまでここに居たら、良いんですか?」
そう緋桜くんが遠慮がちに聞いてくる。
「少なくとも、君がまともに動けるようになるまで………かな」
それ以前に、秋哉さんが帰してくれればの話だけど。
「……家に帰してくれませんか?」
「そんな状態で帰って、その後はどうするつもり?」
「何とかなります」
………何とかって。立つのもやっとの状態で何ともならないだろ。
そう思って、俺はため息をついた。
「今は君を帰すことは出来ないよ」
「どうして……?」
そう聞いてくる緋桜くんに、俺は今は彼を一人にしない方がいいと思った。
「勝手に君を帰らせると、俺が秋哉さんに怒られる」
俺がそう言うと、緋桜くんは黙ってしまう。
………納得してくれたかな?
俺は黙って俯いてしまった緋桜くんの様子を眺めていた。
多分緋桜くんに『"君が"心配だから』とかそういう理由は届かないと思った。
だから敢えて、勝手な行動は『"俺に"迷惑を掛ける』という言い回しをした。
それが正解なのかは分からない。
それでも、少しでも回復するまではここに留まって欲しいと思った。
そんな事を考えながら緋桜くんの様子を見ていると、携帯が鳴って、俺はそれに出るために少しだけ部屋を出た。
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