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第21話

(秋哉tSide) 緋桜がなぜ、疫病神って呼ばれるようになったのかは斎藤先輩に聞いた。 恐らく、俺を怖じけつかせるために話したことだろうけど、そんな話をされても俺が緋桜から離れるなんて有り得ないと思った。 緋桜の周りの人に何があったのか、ペラペラと話していた。 俺が聞かされた話は、すべてが緋桜のせいじゃなくただの事故やタイミングが悪いだけ。 それを周りの人間が、緋桜のせいにした。 「親と何があったの?」 「…………お前には、関係、ない」 そう言って、緋桜は視線を逸らして俯く。 それを見て俺はため息をついた。 「言いたくないなら無理には聞かないよ。人と接するのが嫌なのも分かった 。でも、さっきも言ったけど、そんな状態の緋桜くんを放っては置けない。 ね?お願いだから、今だけは俺に着いてきてくれない?」 俺がそう言うと、緋桜は少し考えて小さく頷いた。 それを見て、俺はホッと息を吐いた。 「良かった。じゃあ佐々木呼ぶから待ってて」 そう言って俺は、佐々木に電話を掛ける 緋桜はその様子をじっと見ていた。 しばらくして、佐々木が到着した 「緋桜くん!良かった、心配してたんだ」 そう言って、佐々木が緋桜に駆け寄る。 「………すいません」 緋桜は佐々木に申し訳なさそうな謝った。 「君が無事ならそれで良いよ」 そう言って、佐々木は笑っていた。 「佐々木、早く車出してよ」 「はい、すぐに。さぁ、緋桜くんも車に乗って」 佐々木に促されて、緋桜は後部座席に乗り込む。俺は助手席に乗った。 車が出発してしばらく、チラッと緋桜を見ると、どうやら寝てしまったみたいだった。 ・・・・・・・・・・ 「秋哉、どうだ緋桜くんの様子は」 部屋から出た俺に佐々木がそう聞いてくる。 「熱はあるけど大丈夫だって、医者が言ってた」 「そうか、なら良かった」 そう言って佐々木はホッと息を吐いた。 あの後、緋桜は熱を出してしまった。 元々体が弱ってた事と、濡れたままずっと外に居たのが原因らしい。 俺は佐々木に説明した後、二人で緋桜の元に戻る。 俺はベッドの横に置いてある椅子に腰掛けた。 緋桜の顔を覗き込んで、汗で額に張り付いた前髪を払う。 「………なぁ佐々木」 「何だ?」 「どうしたら、緋桜は心を開いてくれると思う?」 俺は眠っている緋桜の顔を眺めながら佐々木に聞いてみた。 「それは難しいな。緋桜くんの生い立ちに問題があるんだろうけど、ここまで人を拒絶してるとなると」 「………だよな」 佐々木の言葉にため息が漏れる。 どうやったら、緋桜は心を開いてくれる? 今回、緋桜が俺に着いてきたのはあくまで一時的だ。どうしたら、俺の傍に居てくれる? 「お前、なんでそんなに緋桜くんを気に掛けるんだ?」 「何でって………気になるから仕方ないじゃん」 「それはそうだけど、お前がここまで他人に執着するのは珍しいんじゃないか。 緋桜くんが秋哉のお気に入りなのは分かる。 お前の性格上、お気に入りは傍に置いておきたいのも分かる。 でもそこまで必死になって、連れ戻すのは珍しいだろ」 そう言ってじっと見てくる佐々木に、俺はため息をついた。 「なんか、気になって仕方ないんだ。気になるからいつも目で追っちゃうし、傍にいてほしいと思う。でも、緋桜の方が俺から離れるから、正直どうしていいか分からない」 そう言って、俺は眠る緋桜に視線を向ける。 「………お前、それって……」 そこまで言って、佐々木は言い渋る。 「なに?」 「あーいや、それって……お前、緋桜くんが好きって事なんじゃないのか?」

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