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第23話
目が覚めると、見覚えのある部屋だった。
あぁ、そういえば………
俺、木崎と一緒に戻ってきたんだったけ?
俺が抜け出して、木崎が迎えにきて……
佐々木さんが来て、車に乗ったとこまでは覚えているけど……その後が思い出せない。
俺は身体を起こそうとした。
……あれ、身体が動かない…どうして?
「まだ起きない方が良いよ」
突然、そう声がして体が跳ねた。
声がした方を見ると、木崎が椅子に座ってこっちを見ていた。
「……木崎」
声の正体が分かって、俺はホッと息を吐いた。
「熱があるんだ、まだ寝てて」
「……熱?」
そういえば、身体が怠い。
「あんな状態で外に出て、身体が冷えて、それが原因で熱が出たんだよ」
そう言う木崎は少し怒ってるように見えた。
「……ごめん……また迷惑かけた」
そう言って目を伏せると、木崎はため息をついた。
「迷惑なんて思ってないから安心して。それに無理に連れてきたの俺だし」
木崎は『ね?』と笑う。
どうして木崎は俺なんかの為にここまでしてくれるんだろう?
「ねぇ緋桜くん、熱計りたいんだけど……自分で出来る?」
そう言って、木崎が体温計を取り出す。
俺は体温計を受け取ろうとするけど、うまく身体が動かない。
「無理そうだね、緋桜くん口開けて」
そう言われて、俺は口を開けた。体温計が口に入れられる。
「そのまましばらく、咥えてて」
しばらく待つと、体温計が鳴って数字が表示される。木崎が俺から体温計を取ると、それを確認した。
「……8度7分………まだ高いね」
少し我慢してと言われて、木崎は俺のおでこに冷却シートを貼った。
俺はその手にすら恐怖を感じて、身体を強張らせた。
「今日はもう寝た方がいいね。何かあったらいつでも呼んで」
そう言って木崎は部屋を出て行こうとした。
「……あ……」
俺が思わず声を出すと、木崎は立ち止まった。
「どうかした?」
そう言ってまた近付いてくる。
「………何でも、ない」
そう言って俺は目を逸らした。
散々拒んどいて、こんな時だけ傍に居て欲しいと思うなんて。
……木崎が離れてくのが、寂しいなんて。
そんな事思うなんて馬鹿げてる。
そんな事を考えていると、木崎からクスッと笑い声が聞こえた。
見ると、木崎はまたベッド横の椅子に座っていた。
「緋桜くんが寝るまでここに居るよ」
そう言って木崎はニコッと笑った。
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