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第30話

(秋哉Side) あれから緋桜に会えない。 緋桜のクラスに行っても、いつも姿が無かった。クラスの奴に聞いても知らないと返ってくる。 よくよく考えてみたら、人と関わりを持とうとしない緋桜がクラスに馴染める訳がなかった。クラスでも孤立してるらしい。 緋桜自身は、関わりたくないと距離を取ってたみたいだけど、クラスの連中の反応は違った。 緋桜はクラスでは目立った存在だったらしい。 緋桜は顔は良いから、隠れたところで人気がある。 女子には隠れファンまでいるらしい。 中には斎藤みたいに、緋桜をそういう目で見てる連中もいると聞いた。 何か気に入らないな。 そう思って俺はため息をついた。 「お前、中村緋桜追っかけてんだろ?」 クラスメイトがそう声を掛けてきた。 「なんで知ってるの?」 「学校中の噂になってんぞ」 俺は暇さえあれば佐々木に言われた通り、気になった場所を探した。 人にも聞いたりしてたから、いつの間にか学校中で『生徒会長が、あの中村を追いかけてる』と噂になっていたらしい。 「中村と何かあったのか?」 クラスメイトは興味本意で聞いてくる。 「別に何もないよ」 そう言って俺は口角だけ上げた笑みを向けた。 …………これだけ探しても見つからない。 俺が探してるって、緋桜も知ってる筈だ。 なのに、何で出てこない。 俺は小さくため息をついた。 「秋哉!」 廊下を歩いていると、後ろから名前を呼ばれた。 声をかけてきたのは副会長の佐倉 蒼、二年生の先輩だ。 「佐倉先輩」 「すごい噂になってんな」 そう言って、先輩はニヤニヤと笑いながら言う。 「中村って、あのいつも一人でいる奴だろ?綺麗な顔してるから結構有名だよなー。そんな奴をお前が追っかけてるって、なんで?」 「………そんなこと言うために呼び止めたんですか?」 そう言って俺は先輩を少し睨む。 「そう睨むなって。だって興味あるじゃん。人にあんま興味ない秋哉がそんなに執着するなんてさ」 「佐倉先輩には関係ないですよ」 「ふーん、そんな事言うんだ……… せっかく良いこと教えてやろうと思ってたのになぁ」 「良いこと?」 「あ、気になる?」 そう言って、佐倉先輩はニヤッと笑う。 「……別に」 今までの経験上、こういう顔をする先輩は放っておいた方がいい。こういう時の先輩に関わって何も無かった試しがない。 そう思って俺は先輩を置いて歩き出した。 「中村 緋桜、さっき下駄箱の方に居たぞ」 その言葉に俺はピタッと足を止めた。 「は?」 俺が先輩を見ると、先輩はまたニヤッと笑う。 「だから、中村が下駄箱の方に居たって」 「なんでそれ早く言わないんですか!?」 それを聞いて、俺は下駄箱まで全力で走った。 ずっと探していた。 会いたくて仕方なかった。 放課後とはいえ、まだ結構生徒が残ってる。 すれ違う人が皆振り返ってくるから、俺が必死で走ってるなんてすごく不思議に思えたんだろうな。 でもそんな事はどうでも良かった。 緋桜に会って、話かしたかった。 下駄箱に辿り着いて、俺は緋桜を探した。 外に、校門の方に向かう緋桜の姿を見つけた 俺は急いで、上履きから靴に履き替えた。 早くしないと行ってしまう。これを逃したらまたしばらく見つからない。 「緋桜くん!!」 外に出て、俺は緋桜の名前を呼んだ。

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