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第31話

帰ろうとすると、突然後ろから名前を呼ばれた。振り返ると木崎が立っていた。 「……木崎…」 「良かった、やっと見つけた」 そう言って木崎は俺に駆け寄ってくる。 「……なんで?」 「話がしたかったんだ」 「……俺は、話なんて……ない」 そう言って、俺は視線を逸らす。 「どうして?ずっと探していたんだよ?」 「………知ってる」 だから、会わないように逃げてた。 「……俺のこと、迷惑?」 「………迷惑……だよ」 迷惑なのは俺の方。俺は木崎の側に居ちゃいけない。 「本当にそう思ってる?」 そう聞かれて体が反応した。 「本気でそう思ってるなら、もう緋桜くんには構わないよ」 そう言われて、俺はギュッと拳を握った。 「……なら、もう構うな」 そう言って、俺は歩き出した。 ただ、離れたかった。木崎を傷つけたくなかった。ただ、それだけだったんだ。 「待って!」 木崎が歩き出した俺の腕を掴む。 その瞬間、ゾワッとした感覚に襲われる。 「触るな!」 そう言って俺は木崎の手を払い除けた。 震える体を必死に止める。 「……もう俺に構うな、迷惑だ」 そう言って俺は走り出しだ。 これでいい、これで木崎が傷つかなくて済む。 そう思って俺は木崎を振り切って校門を抜けた。 その瞬間、 「緋桜!!」 名前を呼ばれたと思ったら、突然身体に衝撃が走った。 なにが起きたのか分からなかった。 気付いた時には、横に木崎が倒れていた。 「…………木崎?」 なんで木崎は倒れてるんだ? 「……木崎……木崎」 俺は倒れている木崎の体を揺する。 それでも、木崎が起き上がる気配がない。 ………………………俺の、せい? 俺のせいで、木崎が……………? 騒ぎを聞き付けて、残っていた生徒や教師が駆け付ける。 何かを叫んでるようだったが、何を言ってるのか聞こえない。 ただ俺の目には、倒れている木崎の姿だけが映っていた。

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