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第33話

何が起きたのか分からなかった。 倒れている木崎を見て、あの時の光景が頭に浮かんだ。 目の前に血が広がって、その真ん中に人が倒れている。 また俺のせいで人が………… 何のために、木崎から離れたんだ。 こうなるのか嫌だったから、こうならない為に離れたのに。 嫌だ!もう失うのは嫌だ! 俺のせいで、もう人が死ぬのは嫌だ。 そう思ったら、目の前が暗くなった。 俺が中1の時、俺の運の悪さのせいで皆、俺から離れていった。 ただ一人だけ、そんな事は気にせず側にいる奴がいた。 そいつの名前は、冴木 拓真 いくら逃げても、拓真はいつの間にか隣にいた。 拓真は何するでもなく、ただ側にいるだけ。 付かず離れず、俺はそれが心地いいと思い始めていた。 拓真の親も、気にせずに俺と接してくれた。 今までそんな経験が無かった俺は、それが嬉しくて、どこか照れ臭くて、不思議な感覚だった。 拓真は俺が何かに巻き込まれたりするといつも助けてくれた。 だから俺も精一杯、拓真に答えた。 俺はそれが続くと思っていた。 あの時までは……… ある日、俺と拓真と二人で町に遊びに行った。 当然その"お出かけ"は俺のせいでトラブル続きだった。 町まで行くために乗った電車は遅れ、止まり、行きたかった店は臨時休業だったり、当然ほしい物は手に入らない。 そういうことが続くから、俺は自然と出かけることをしなくなった。 でも、拓真はそれに対して怒るどころか、逆に何が起こるのか楽しみにしていた。 拓真と一緒に居て、俺も少しずつそれが楽しめるようになっていた。 一通り遊び終えた俺たちは、家に帰るために駅に向かった。 駅前の大通り。 俺たちはそこで信号待ちをしていた。 本当に偶然だった。 信号待ちをしていた人の群れに、車が突っ込んだ。 何が起きたのか分からなかった。 人の叫び声、クラクションの音、遠くから聞こえるサイレンの音。 血を流して踞ってる人やそれを手当てしてる人。 回りではそんな光景が広がっていた。 ただ俺の目に映っていたのは、地面に広がる赤い色だった。 目の前に広がる赤い色、その真ん中に人が倒れている。 俺はそれが誰だか、その時は判断出来なかった。 俺も無傷では無かった為、すぐに病院に運ばれた。 そこで落ち着いた頃、聞かされた。 『冴木 拓真が亡くなった』 と 信じられなかった。 ついさっきまで一緒に居て、一緒に笑っていた。 だから信じられなかった。 拓真の遺体を見るまでは…………

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