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第36話

(秋哉side) 「………ごめんなさい…………ごめんなさい………」 緋桜は涙を流して謝り続ける。 「……緋桜?」 「……木崎…………ごめん………俺のせいで……………死なせてしまった………」 「え?」 もしかして、緋桜は俺が死んだと思ってるのか? 「緋桜、俺は生きてるよ」 そう言って、俺は緋桜の頬を両手で包む。 「緋桜。大丈夫、俺は生きてる」 目は合わないし、声も届かない。緋桜は泣きながら俺に謝り続ける。 あぁ、本当に危うい。 この手を離したら消えてしまうんじゃないかと思う。 「………ごめんなさい…………ごめんなさい…………」 「緋桜」 「………木崎………ごめん………」 「俺はここにいるよ」 「…………木崎………」 「大丈夫だから」 俺が側に居るから、手を離さないから。 だから………… 「大丈夫だから。俺は死なないから、だから戻っておいで……緋桜」 そう言って、俺は緋桜に口づけた。 ほとんど無意識だった。 ただ気付いて欲しかった。俺はここに居るってこと。 「んっ」 緋桜の発した声で我に返った。 正直驚いた。まさか自分がこんな行動を取るなんて思っても見なかった。 自分から男にキスするなんて。 ……………でも、ようやく分かった。 「………きさ…き……?」 そんな事を考えていること、名前が呼ばれて俺はハッとした。 「緋桜!?」 緋桜の顔を見ると、さっきまでとは違い目が合う。 俺はホッと息を吐いた。 緋桜と目が合うと、緋桜の目から再び涙が流れた。 「………いき……てる……?」 まだ信じられないとでも言うような顔で見てくる緋桜に、俺は笑い掛けた。 「生きてるよ」 『ほら』と秋俺は緋桜の手を自分の胸に持っていった。 そこから伝わる心臓の鼓動に、緋桜は更に泣いた。 緋桜はその後しばらく泣き続け、疲れて眠ってしまった。 「先生がしばらく寝かせてても良いって」 先生と話をした佐々木が戻ってきてそう報告してくる 「……そう」 俺は眠っている緋桜を眺めていた。 「お前もあんま無理するなよ。さっきも怒られたばっかだろ」 「分かってる」 「そうだ、検査結果は問題ないから明日には帰っていいってさ」 「……ふーん」 と興味無さそうに返事を返すと、佐々木はため息をついた。 俺は眠っている緋桜の髪を弄る。 「なぁ佐々木、緋桜は過去に何があったんだろうな……?」 似たようなことがあったのかもと聞いたけど…… 「それは俺にも分からない」 と佐々木は言う。 緋桜が話してくれれば良いけど、正直難しいだろうな。 それは恐らく緋桜の中でも、あまり触れられたくない事だと思う。 「……佐々木」 「ん?」 「俺、今回の事で分かった」 「何を?」 「何でこんなに緋桜が気になってたのか、会いたいと思ったのか、話したいと思ったのか、傍に居てほしいと思ったのか。友達になんでここまで思うのか俺自身分からなかった。でも、今回の事で分かった………」 有り得ないと思った。そんなはずないと思った。 でももう、認めるしかない。 もうこの気持ちを無視なんて出来ない。 「俺は緋桜が好きだ」

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