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第37話

目の前が真っ暗だった。 ただずっと頭の中であの時の言葉が繰り返されていた。 『あんたのせいよ!!あんたさえ居なければ!!』 そうだ、俺のせいだ。俺が居なければ……… 「……う」 何か聞こえた気がした。 「……おう……緋桜」 これは、木崎の声。 そんな訳ないのに………木崎の声が聞こえるはずがない。 ………でも 「ごめんなさい」 謝りたかった。謝って済まないのは分かってる。 それでも謝りたかった。 「ごめんなさい」 俺が木崎を死なせてしまった。 死なせたくなかったのに。 また俺のせいで…… そんな時、唇に何か暖かいものが触れた。 ……なんだ? 『戻っておいで』 そう声が聞こえて、真っ暗だった視界が開けたような気がした。 視界がはっきりしたかと思ったら、目の前には木崎が居た。 「………きさ…き……?」 「緋桜!?」 俺は幻を見てるのか。だって、木崎は………… 「……いき……てる……?」 そう言うと、目の前の木崎は優しく微笑んだ。 「生きてるよ」 そう言って、木崎は俺の手を掴んで自分の胸に持っていく。 手からトクトクと木崎の心臓の鼓動が伝わってきた。 生きてる………… 木崎が生きてる。そう思ったら、自然と涙が出た。 その後俺は、泣き疲れていつの間にか眠ってしまった。 目が覚めると、見慣れない天井が視界に入ってきた。身体を起こして見回す。 真っ白なシンプルな部屋、雰囲気から病院なんだと分かる。 …………木崎が居ない。やっぱり、あの木崎は夢だったのかな? 木崎が生きてたなんて、やっぱり俺の都合のいい夢だったんだ。 そう思っていると、突然ドアが開いて人が入ってきた。 「あ、緋桜起きて…………ってなに泣いてるの!?」 そう言って木崎が駆け寄ってくる。 「どうした?何かあったのか?」 そう言って木崎は俺の涙を指で拭った。 その瞬間、木崎の体温が伝わってきた。 俺は無意識に木崎に抱き着いた。 「え!?ひ、緋桜!?」 「………夢、だと思った」 「え?」 「木崎が、生きてるなんて……都合いい夢だと思った」 そう言って、俺はギュッと腕に力を入れる。 そんな俺を見て、木崎がクスッと笑う。 「大丈夫、俺は死なないよ。ずっと側に居るから」 そう言って、木崎が俺を抱き締めてきた。 抱き合ってると、後ろからコホンと咳払いが聞こえた。 「邪魔して悪いけど、俺たちのこと忘れてるだろ?」 そこには佐々木さんと一緒に、医者と看護師が立っていた。 俺は我に返って慌てて木崎から離れた。 ……俺は何やって!? 俺は自分がしたことを思い出して顔が熱くなった。 「邪魔するなよ。せっかく緋桜から抱き付いてきたのに」 そう言って、木崎がチッと舌打ちをした。 「こうでもしないと、俺たちの事を思い出してくれなそうだったからな」 佐々木さんがそう言い返す。 俺は佐々木さんと言い合ってる木崎を眺めていた。 その後ろから、少し困った感じで医者が入ってきて俺の方に寄ってきた。 「中村さん、気分はどうですか?」 そう言って近付いてきた医者に、俺は思わず体が強張る。 「え、えと………大丈夫、です」 「……そうですか。ところで中村さん、親御さんは?」 「…え?」 「君は未成年なので、今回の事を親御さんに連絡する必要があるんですよ」 「…親は……親は、居ません」 俺は俯いて、そう答えた。 「…………分かりました」 医者が何かを察したようにそう言う。 「あの、取り敢えず今は俺が保護者変わりでは駄目ですか?」 そう佐々木さんが言い出す。 俺が佐々木さんを見ると、佐々木さんはニコッと笑った。 それを見ていた医者も頷く。 「そうですね、今回はそれで手続きしましょう」 こちらへと言う医者に、佐々木さんが着いていった。

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