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第40話
退院して数日がたった。
俺はまた、木崎から逃げていた。
それは、前回の理由とは全く違う理由。
退院する日に、木崎が突然一緒に暮らさないかと言い出した。
俺はそれを断った。
一緒に暮らすなんて無理に決まってる。
ただ、木崎は諦めてないようで、しつこく迫ってきた。
木崎がまた傷付くのは嫌だ。
俺と一緒に居たらまた木崎が傷つく。
それが嫌だった。
俺は、時間が経てば諦めるだろうと思って、木崎と会わないようにしていた。
木崎は勘がいいと言うだけあって、逃げても追い付いてきた。
どうしたら木崎から逃げられるんだ。
そう思って、俺はため息をつきながら廊下を歩いていた。
「君、中村 緋桜くんでしょ?」
廊下を歩いていると、突然声を掛けられて身体がビクッと跳ねた。
「やっぱりそうだよね?中村 緋桜くんだよね?」
そう言ってその人は近付いてくる。
………これ、あの時と同じ。
そう思ったら身体が震えだした。
俺は近付いてくるその人から、逃げるように後退った。
でも後退った先は壁で、俺は逃げ場を失う。
「ねぇ君さあ、最近秋哉と仲良しだよね」
そう言ってその人はどんどん近付いてきた。
………嫌だ、怖い……
そう思って俺はギュッと目を閉じた。
「何してんですか、あんたは!!」
その声と同時にバシッと何かを叩く音がする。
俺はゆっくりと目を開けると、そこには木崎が立っていた。
「いったいなぁ!お前、仮にも先輩の頭を殴るか、普通!?」
「緋桜を怖がらせておいて何言ってんですか!佐倉先輩!」
………木崎。
俺は木崎の姿を見た瞬間、気が抜けたその場に座り込んでしまった。
急に座り込んだ俺に木崎が駆け寄ってくる
「緋桜、大丈夫!?」
木崎はそう言って、手を差し伸べてきた。
「……大丈夫」
俺はその返すと、木崎の手を借りて立ち上がった。
「緋桜、この人は2年生で副会長の佐倉 蒼先輩」
そう木崎がその人を紹介してきた。
木崎は『この人は怖くないから』と言う
………副会長。
そういえば、見たことある気がする。
「いや~驚かせてごめんね?秋哉が気にしてるのがどんな奴か気になってさ」
そう言って佐倉先輩は笑う。
「だからって緋桜に迫らないでくださいよ!」
と木崎が先輩に意見する。
この二人、仲良いんだな。
二人とも同じ生徒会だから当然か……
そう思ったら、何か胸がチクンと痛んだ気がした。
……何か、この場に居たくないな。
そう思って、俺は木崎の服を軽く引っ張った。
「…悪い。俺、次移動だからもう行く」
そう言って、俺は足早にその場を立ち去った。
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