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第42話
(秋哉side)
急ぎすぎ?ゆっくり行けってどういう意味なんだ?ゆっくり行けば、緋桜は逃げないのか?分からない。
「珍しいですね、秋哉さんが迎えに来いなんて。また、緋桜くんに何かあったんじゃないかと思いましたよ」
迎えに来た佐々木がそう言う。
「うん、ちょっとね」
「何かあったんですか?」
佐々木はバックミラー越しに俺の顔を見る。
「うーん、なんか訳分かんない。今日、佐倉先輩に言われたんだ。急ぎすぎだって、もっとゆっくり行けって……」
「佐倉先輩って確か、生徒会の方でしたよね?」
そう聞かれて、俺は頷く。
「急ぎすぎって何がだ?ゆっくりってどういう意味?」
「もうちょっと詳しく話してもらって良いですか?」
そう言われて、俺は先輩に言われたことを佐々木に話した。
「緋桜くんは追えば逃げるタイプですから」
「それが何?」
「追えば追うほど、緋桜くんはどんどん離れていきます。秋哉さんの場合、追いかけて捕まえるタイプなので当然、緋桜くんは逃げます」
「だから、意味分からないって!」
「押して駄目なら引いてみろ、ですよ。緋桜くんと少し距離を取ってみてはどうですか?」
「緋桜と距離を取る………」
「ただ緋桜くんの場合、人が自分から離れていくのに馴れてしまってますからね。気を付けないと、そのまま戻ってこない可能性があります。ちゃんと、距離感を見極める必要がありますね」
「………なんか、面倒くさい」
「好きな人に好きになって貰おうと思ったら、それほどの努力が必要なんですよ」
そう言って、佐々木はフッと笑った。
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