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第43話

佐倉先輩に絡まれた日から木崎が来なくなった。 『今日も木崎くん来ないね』 そんな声がどこからか聞こえてくる。 いつもは、休み時間の度に一人になれる場所に行く。 俺は今日は何となく教室に居た。 正直この教室は居心地が悪い。 皆こっちを見ながら、何かヒソヒソと話す。 何を言ってるのかは聞こえないけど、俺の事を話してるのは確かだ。 俺はその雰囲気に耐えられなくて教室を出た。 俺が教室を出て向かったのは別館の屋上。 本館の屋上は人が結構いるけど、別館の屋上はほとんど人がいない。 この学校で唯一、落ち着ける場所だ。 …………木崎は俺から離れたくなったのかな。 でも、正直よく持った方………木崎に出会う前に戻っただけだ。 俺はそんなことを考えながら、ボーっと空を眺めていた。 そう、戻っただけだ。 なのに………なんで寂しいなんて思うんだろう。 いままで、そんな事思ったことなかったのに。 俺はフェンスに凭れ掛かってうつ伏す。 「…………木崎」 完全に無意識だった。 俺は木崎の名前を呼んでいた。 「なに?」 その瞬間、突然後ろから声がして俺は驚いて振り向いた。 そこには木崎が居て、俺を覗き込む。 「なんで?なんで、木崎がここに!?」 「緋桜の姿が見えたから追っかけてきた。それより、今俺の事を呼んだよね?」 そう言って木崎は俺をじっと見る。 「……え?」 ……俺が木崎の名前を呼んだ? 俺は木崎を呼んだ記憶が無くて、首を傾げた。 そんな俺を見て、木崎は『まぁいいや』と言う。 「ところでさぁ、緋桜はなんでここに居るの?」 木崎がそう聞いてくる。 「教室は居心地が悪い………ここは人が居なくて落ち着く」 「そっかぁ」 そう言って、木崎はいつの間にか俺の隣に居座った。 「…………木崎は」 「え?」 「……木崎は、なんで最近教室に来なかったんだ?」 「あぁ、最近生徒会の仕事が忙しくてね」 「生徒会?」 「うん。ほら、もうすぐ学園祭があるでしょ?その打ち合わせやら、準備やらで何かと駆り出されるんだよね」 そう言って木崎がため息をつく。 ……学園祭、そういえばもうすぐか。 「学園祭が終わるまでは、生徒会の仕事で手が離せないんだ」 「………そうか」 そう言って俺は無意識に下を向いてしまう。 「………もしかして、俺と会えなくて寂しい?」 俺を見て、木崎がそう聞いてきた。 俺は思わずきょとんとしてしまった。 ……寂しい?俺が? 木崎と会えなくて……? そう思ったら、俺は顔が熱くなった。 「そ、そんなわけ……」 俺は慌てて否定する。 そんな俺を見て、木崎はクスクスと笑っていた。 「ねぇ緋桜。学園祭の日、少しだけだったら時間が取れるんだ。良かったら一緒に回らない?」 ………一緒に回る? 木崎に『ね?』と言われて、俺は頷いた。

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