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第50話
ー学園祭二日目ー
木崎は午前中は見回りがあるらしく、それが終わってから合流する事になった。
今日は一般客も入るため、いつも以上に人口密度が濃い。
俺は、木崎の仕事が終わるまで別館の屋上に避難していた。
「ごめん!遅くなって!」
しばらく待っていると、木崎が息を切らして走ってきた。
謝る木崎に俺は首を振る。
「大丈夫、そんなに待ってない」
「そう?良かった」
そう言って、木崎はニコッと笑った。
じゃあ行こうかと木崎に言われて、俺たちは本館に向かった。
最初は、昼時というのもあって屋台をやっているクラスに入る。
木崎が入るなり、そのクラスからざわめきが起きる。
女子は色めきだって、男子も何か興奮していた。
皆が木崎に声をかける。
木崎もそれに答えていた。
やっぱり、木崎は男女共に人気があるんだな。
俺は少し離れた位置からその様子を眺めていた。
生徒たちから解放された木崎が何か買ってくると言って屋台の方に行った。
俺は木崎に言われて空いてる席を探すけど見つからない。
それはいつもの事だった。
「あれ緋桜、座ってなかったの?」
食料を買って戻ってきた木崎が、立ったままの俺にそう言う
「……空いてない」
「まぁ、時間が時間だからね」
そう言って、木崎は回りをキョロキョロと見回した。
木崎はこういう時、決して俺のせいとは言わない。
昔からこういう時は回りの人に俺のせいだと言われてたから、木崎といると何か不思議だ。
「やっぱり空いてないね」
そう言って、木崎がため息をつく。
そのため息に、俺は体が跳ねた。
やっぱり、木崎も俺のせいだって思ってるのかな?
そう思って木崎を見ていると、木崎は笑顔で俺を見た。
「緋桜、天気も良いし外で食べよう」
木崎はそう言って外を指差した。
俺たちは外に出て、花壇の縁に座った。
「はい、これ緋桜の分ね」
そう言って木崎がパックを渡してきた。
「………ありがとう」
俺はそのパックを受け取る。
「何かちょうど売り切れちゃって、新しく作ってもらったんだ」
それを聞いて、体揺れる。
………やっぱり売り切れてたんだ。それもよくある事だ。
「でも、何かラッキーだったな」
「え?……ラッキー?」
俺は聞き慣れない言葉に、思わず木崎の顔を見る。
「うん、だって出来立てが食べれるんだよ?ラッキーじゃん」
そう言う木崎に、俺は何も言えなかった。
「緋桜?どうかした?」
急に黙ってしまった俺の顔を木崎が覗き込んできた。
「何でもない」
そう言って、俺は首を振る。
売り切れていたことが、逆にラッキーなんて………
そんなの考えた事も無かった。やっぱり木崎は不思議だ。
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