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第51話

(秋哉side) こうして緋桜と一緒にいると改めて思う。 緋桜は人を惹き付ける。ただ人との接触を嫌う緋桜に近付こうとする人は少ない。 大抵が遠くから見るくらいだ。 緋桜は容姿端麗と言えば分かりやすいのか、綺麗な顔立ちをしている。 こうして一緒に歩いていても、大抵の人が緋桜を見てる。 俺自身も注目されてる自覚はあるけど、緋桜はそれ以上だ。 まぁ本人は見られてる自覚は無いみたいだけどな……… 緋桜は学園祭みたいな学校行事は初めてだと言った。 恐らく、緋桜自身がトラブルを避けて参加しなかったんだろう。 緋桜は自分が運が悪いと思い込んでるから。 本当はそんな事ないと教えてあげたいけど、それはかなり難しい。 今回、学園祭に参加する事で楽しいと思ってくれたら良いんだけどな。 俺と緋桜は昼時というのもあって、手始めに屋台をやっているクラスに入った。 俺と緋桜が教室に入るとざわめきが起きる。 昨日、俺が緋桜のクラスに行ったことが噂になってるらしい。 そこに今日、一緒に行動してるから皆いろいろ勘ぐってるんだろうな。 まぁ、そこら辺はあんまり気にしてないけど。 俺たちが入ったクラスは、奥に屋台を作って焼そばやたこ焼きを売っていた。 手前に食べるための椅子が用意されている。昼時というのもあってかなり混んでいた。 俺が食料を買いにいく間、空いてたら席を取っておいてと緋桜に頼んだ。 ………焼そばとたこ焼き、どっちがいいかな? 俺はうーんと悩む。 腹も減ってるし……焼そばかな。 そう思って焼そばの屋台に行くと、ちょうど作り置きが無くなったらしく新しく作ってくれた。 新しく作ってもらっていたため、時間がかかって緋桜の所に戻ると緋桜が立って途方に暮れていた。 「あれ緋桜、座ってなかったの?」 そう言うと、緋桜は俯いてしまう。 「……空いてない」 「まぁ、時間が時間だからね」 所詮、教室を使ってやっているものだから、席が用意されているといっても大した数じゃない。 混んでいればすぐに埋まってしまう。俺が緋桜をチラッと見ると、緋桜は俯いたままだった 恐らく席が空いてないのは自分のせいだと思ってるんだろうな。 緋桜はすぐに自分のせいにしてしまうから。 「緋桜、天気も良いし外で食べよう」 そう言うと、緋桜は小さく頷いた。 外の花壇の縁に座って、焼そばが入ったパックを緋桜に渡す。 緋桜は戸惑いながらも、それを受け取った。 それでも緋桜は終始、俯いたままだった。 「何かちょうど売り切れちゃって、新しく作ってもらったんだ」 俺がそう言うと、緋桜は更に俯いてしまった。 あ、言葉間違えた? 「でも、ラッキーだったな」 俺がそう言うと、緋桜が驚いた顔でこっちを見てきた。 「え?……ラッキー?」 「うん、だって出来立てが食べれるんだよ?ラッキーじゃん」 そう言うと、緋桜は黙ってしまった。 どうしたと聞くと、何でもないと返ってきた。 でも、さっきと違って落ち込んでる感じじゃない。 そんな緋桜を見て、俺はホッと息を吐いた。

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