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第52話
(秋哉side)
その後は、緋桜と一緒に色々な所を回った。
そこで、緋桜の新たな一面があった。
それは、以外に運動神経がいいこと。
サッカーボールを的に当てるゲームなど、身体を使うゲームがあった。
最初緋桜は嫌がったけど、俺が無理にやらせた。
緋桜も渋々ゲームに参加する。
緋桜は10回中、9回を的に当てた。
それも緋桜は淡々と当ててくから、見てた回りの人も唖然としていた。
外したのは最後の一回で、わざと外したように見えた。
「どうして最後の外したの?」
ゲームを終えて戻ってきた緋桜に、そう聞いてみる。
「パーフェクトの景品、一つしか用意されてなかったから」
緋桜がそう言うと、俺はもう一度ゲーム会場の方を見た。
………確かに、パーフェクトの景品は一つだけだ。だからわざと外したのか。
………本当に緋桜は人の事ばかり考えてるな。
そう思って、俺は自然と笑みが溢れた。
それと、もう一つ……
「あ、お化け屋敷がある」
今度は校舎の中を回ってると、俺たちはお化け屋敷をやってるクラスの前を通り掛かった。
やってるのは二年生のクラスだ。
「会長!良かったら入ってってよー」
そう受付をしていた先輩に呼び止められた。
「どうする?」
そう聞くと、一瞬緋桜の顔が引き吊ったような気がした。
「もしかして、怖い?」
「……大丈夫」
そう言って、緋桜は小さく首を振る。
俺と緋桜はお化け屋敷に入ってみる事にした。
正直、学園祭のお化け屋敷ってことで、あまり期待はしてなかった。
中に入って、ドアが閉まると真っ暗になった。
目が慣れてないせいか、隣にいる緋桜の顔も分からない。
……こんなに暗いんじゃ、進みようがないな。目が慣れるまで待つしかないか。
そんな事を考えていると、緋桜が俺の服の袖を掴んできた。
緋桜が俺の服の袖を掴んだ手に更に力を入れる。
緋桜の姿はまだシルエットしか見えないけど、震えてるのが分かる。
………やっぱり怖いのか?
「……緋桜?」
緋桜の名前を呼んでも、緋桜からの反応が返ってこない。
ようやく目が慣れてきて、緋桜の姿が見えてくる。
そこで見た緋桜は、自分を抱き締める状態で震えてた。
「緋桜!?」
緋桜の様子がおかしい。
「緋桜、大丈夫!?」
声を掛けても、緋桜からの返事はない。
「緋桜、出よう」
俺はそう言って、緋桜を引っ張って教室の外に出た。
外の明るさで少し目が眩む。
俺が緋桜を見ると、緋桜は冷や汗をかいて震えていた。
緋桜は顔色が悪くて、明らかに尋常じゃない。
「緋桜、来て」
俺は緋桜を引っ張って、人のいない廊下に連れていった。
人気のない所まで来ると、緋桜の様子を見る。
「緋桜、大丈夫?」
そう聞くと、少し落ち着いたのか緋桜は小さく頷く。
「どうしたの?」
俺がそう聞くと、緋桜は黙ってしまう。
「緋桜」
俺が名前を呼ぶと、緋桜はよくやく口を開いた。
「………………暗いのが………駄目で………」
緋桜は小さく呟くように言う。
「ッ!なんで言わないの!?」
俺はそれを聞いて、思わず怒鳴ってしまった。
その瞬間、緋桜の身体がビクッと揺れる。
「……………ごめん」
緋桜は俯いて、その身体は少し震えていた。
俺はそれを見てため息をつく。
「どうして言わなかったの?」
俺は出来るだけ優しく話す。
「……………木崎が………楽しそう、だったから………」
「緋桜も楽しくなきゃ意味ないよ。駄目なものは駄目って言って。隠さないで、ちゃんと話して」
「……………ごめん………」
そう言って、緋桜は俯いてしまう。
本当に緋桜は人の事ばかりだ。もっと自分の事、考えていいのに。
俺は手を伸ばして、緋桜の頬に触れるか触れないかで止める。
俯いてた緋桜も不思議そうに俺を見る。俺はそんな緋桜に笑い掛けた。
「緋桜、我慢なんてしなくていいよ。怖いものは怖いって言っていいし、嫌なものは嫌って言っていい………俺が全部聞いてあげるから」
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