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第54話
(秋哉side)
俺が怒鳴ったせいか、緋桜はシュンとしてしまっている。
ちょっと怒りすぎだかなぁ。
「緋桜」
俺は俯いてしまっている緋桜に声を掛けた。
途端に緋桜の身体がビクッと揺れる。
緋桜は少し怯えた顔をして俺を見る。
……あぁ、完全にビビっちゃってる。どうしようかな………
俺は小さくため息をついた
「ごめん………俺、思わず怒鳴っちゃって………」
そう言うと、緋桜が首を振る。
「……俺が、悪いから………」
そう言って、緋桜はまた俯いてしまう。
あぁ………もう、本当、どうしよう。
俺はどうすれば緋桜の機嫌が直るのか考えた。
取り敢えず、少し落ち着いた方がいいか………
「緋桜、ちょっと休もうか?」
「え?」
「疲れたでしょ。ちょっと休もう」
俺がそう言うと、緋桜は少し考えてから頷いた。
それを見て、俺は自然と笑みが溢れた。
俺たちは近くで喫茶店をやっているクラスを見つけてそこに入った。
そこでも案の定、ざわめきが起きる。
俺たちはウエイトレスをやってる生徒の案内で席についた。
「緋桜、何にする?」
そう言って、俺は緋桜にメニューを渡す。
緋桜は渡されたメニューに目を通した。
その様子を見ていると、緋桜の視線があるメニューで止まった。
「……紅茶と……チョコレートケーキ」
緋桜がそう言うと、俺は緋桜の希望の紅茶とチョコレートケーキと自分用のコーヒーを注文した。
しばらくすると、注文したものが運ばれてくる。
運ばれてきたチョコレートケーキを前に緋桜が『いただきます』と小さく呟いて口に入れた。
その瞬間、緋桜の表情が少し変わった。
………あれ?
相変わらずの無表情だけど、ちょっと感じが違う。
「緋桜、もしかしてチョコレートケーキ好きなの?」
俺がそう聞くと、緋桜は少し頬を赤らめてコクンと頷いた。
その瞬間、俺は顔を押さえた。
ヤバい、なにこれ!?すごい可愛いんだけど!
俺はチョコレートケーキを頬張る緋桜を見て、一人で悶えていた。
良かった、これで少しは機嫌が直ったかな。
でも、チョコレートケーキか………
「緋桜は甘いのが好きなの?」
俺がそう聞くと、緋桜は首を振った。
「甘すぎるのは得意じゃない」
「え、でも、今ケーキ食べてるよね?」
あれは甘くないのか?
「これは平気」
……どうやら緋桜の好みはかなり難しいらしい。
でもまぁ、また一つ緋桜のことが知れたかな。
そう思って俺は笑みが溢れた。
その後は他愛もない話をした。
緋桜は自分からはあまり話さないけど、こっちから話し掛ければ答えてくれる。
もっといろいろ話してくれれば良いんだけどな。
そんな事を考えていると、奥からガシャンという大きな音と悲鳴が聞こえてきた。
「なんだ!?」
俺は音のした方を見る。
どうやら、女子生徒が食器を落としてしまったらしい。
女子生徒の回りに人だかりが出来ていた。
俺はハァとため息をついて、女子生徒に近付いた。
「大丈夫ですか?」
「あ、会長!」
よく見ると、ガラスで切ったのか女子生徒の手から血が滴り落ちている。
「怪我してる。保健室に行こう」
俺は手近にあった布を女子生徒の手に巻いて言う。
「緋桜、悪いけど……………緋桜!?」
俺は振り向いて緋桜の顔を見ると、その顔は血の気が引いていた。
身体も微かに震えている。
「緋桜!?」
俺は震えてる緋桜に手を伸ばす。
緋桜は伸ばした俺の手を避けて後退る。
緋桜はそのまま教室を飛び出した。
「え!?ちょっ!待って、緋桜!」
俺も突然の事で少しテンパった。
「ごめん!この人を保健室まで連れてって!」
俺は近くにいた生徒に女子生徒を任せて緋桜を追いかけた。
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