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第55話
(秋哉side)
「緋桜、待って」
俺は緋桜を追って廊下を走る。
ようやく追い付いて、俺は緋桜の腕を掴んだ。
「離せ!」
緋桜は掴んできた俺の手を払い除けた。
緋桜は震えてこっちを見ようともしない 。
顔は血の気が引いてるし、呼吸も荒い。
どうしたんだ?
俺はもう一度緋桜に手を伸ばす。
そこで、自分の手に血が付いていることに気付いた。
………もしかして、血?血が嫌なのか?
俺は制服の裾で手についた血を拭い取った。
「緋桜、もう大丈夫だから」
そう言って俺は緋桜に触れようとする。
「嫌だ!」
俺が緋桜に触れようとすると、緋桜はそれを拒む。
「緋桜、落ち着いて!」
そう言って俺は緋桜の腕を掴んだ。
……これ、ちょっとヤバいな。
混乱して訳が分からなくなってる。
「緋桜!」
俺は暴れる緋桜を抱き締めた。
「ッ!嫌だ!離せ!」
緋桜は抱き締める俺を押し返そうとする。
「大丈夫、もう大丈夫だから」
そう言って、俺は腕に力を入れる。
「大丈夫。もう怖いことなんてないから」
そう言って俺は緋桜の背中を擦る。
そうすると落ち着いて来たのか、抵抗する緋桜の力が弱まった。
「……きさ、き……」
緋桜の顔を見ると、ちゃんと目が合う。
「もう大丈夫だよ」
そう言って俺は緋桜に笑い掛けた。
その瞬間、緋桜の目から涙が溢れる。
「ーーッ!き、さき……」
緋桜はボロボロと涙を流して抱き着いてきた。
「うん、もう大丈夫」
そう言って俺も緋桜を抱き締めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(緋桜side)
俺は木崎に連れられて生徒会室に来ていた。
「少しは落ち着いた?」
木崎がそう聞いてくる。
「…………ごめん………迷惑掛けて……」
俺がそう言うと木崎はクスッと笑う。
「大丈夫だよ」
そう言って木崎は淹れてくれた紅茶を手渡してきた。
「………ありがとう」
そう言って、俺はそれを受け取る。
俺はその紅茶を一口飲んで、ホッと息を吐いた。
「今日はもう帰ろう」
「え?」
「緋桜も色々あって疲れたでしょ?」
木崎にそう言われて、俺は頷いた。
これ以上は木崎に迷惑掛けられない。
そう思った。
「佐々木呼ぶから、少し待ってて」
そう言って木崎が携帯を取り出す。
「大丈夫、一人で帰れる」
俺は、電話で佐々木さんを呼び出そうとしている木崎を止める。
「緋桜、俺が緋桜を一人で帰すと思ってるの?」
そう言われて、俺は黙ってしまう。
「緋桜」
名前を呼ばれて俺は木崎を見る。
「そんなに心配しなくていいよ、大丈夫だから……ね?」
そう言って木崎は笑った。
……さっきから、何なんだろう。
胸がドキドキして、木崎の顔がまともに見れない。
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