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第56話

学園祭が終わって、通常の生活が戻ってきた。 ただ、前とは違うことがあった。 「中村くん、中村くんのお陰でうちのクラスMVPに選ばれたんだよ!」 「あ、中村!お前、サッカー上手いんだってな!サッカー部入ってくんない?」 などと、クラスメイトに話し掛けられるようになった。 それは俺が学園祭の一日目でウェイターをしたのと、二日目に木崎と一緒にゲームに参加したかららしい。 今まで、話し掛けてくる奴なんてほとんど居なかったのに。正直、かなり居心地が悪い。 そして、もう一つ………… 「緋桜、お昼一緒に食べない?」 昼休みに入って、木崎が俺の教室に来た。 木崎が教室に来るだけで、クラス中がざわめく。 俺は木崎の誘いに小さく頷いた。 俺たちは別館の屋上に向かった。 廊下を歩いていると、なぜか注目される。 あぁ、なんか嫌だ。 別に楽しくなかった訳じゃないけど……… やっぱり、学園祭なんて参加しなければ良かった。 「緋桜?どうかした?」 そんな事を考えていると、不意に木崎に話し掛けられる。 木崎の方を見ると、木崎が俺を覗き込んでくる。 「っ! ……何でも、ない」 俺は思わず木崎から距離を取る。 「…そう」 学園祭の日から、なんかおかしい。 木崎といると、胸が苦しくなる。 かといって、調子が悪い訳じゃない。 何なんだろう、これは……… 「ねぇ緋桜、今度の日曜って暇?」 俺がそんなこと考えていると、木崎が唐突に言う。 「………日曜日?これといって予定無いけど」 てか、予定が有るわけない。 俺がそう言うと、木崎はニコッと笑った。 「ならその日、一緒に出掛けようか」

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