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第61話

ここから電車での移動らしい。 行き先は木崎に任せっきりだから、どこに行くのか分からない。 「……どこに行くんだ?」 ホームで電車を待つ間、木崎に聞いてみた。 「ん?ただの買い物だよ。ちょっと遠出して隣町まで行ってみようと思って」 「………そうか」 ………電車はあまり好きじゃない。だって、どうせ…………… 電車を待っていたら、ホームのスピーカーからアナウンスが流れた。 『ホームのお客様にご連絡致します。 2番ホーム到着の9時50分発、〇〇行き急行。計器の不具合のため、遅れが生じております。 お急ぎのところ、大変申し訳ありません。 今しばらく、お待ちいただきますようよろしくお願いいたします』 アナウンスを聞いて、ホームで待っていた客がざわめき出す。 ………やっぱり。 「電車、遅れるのか」 アナウンスを聞いた木崎がスピーカーに視線を向けて呟く。 「………ごめん」 「え!?なんで緋桜が謝るの?」 木崎は急に謝った俺に視線を向ける。 「あ、いや………俺が乗ろうとする電車は大抵遅れるから」 そう言って俺は下を向いた。 そんな俺を見て、木崎がフッと笑った。 「アナウンスで言ってたでしょ。計器の不具合だって、待ってたらその内来るよ。 それに急いでる訳でもないし、ゆっくり行こう」 そう言って、木崎はニコッと笑う。 「でも………」 「大丈夫だって、ね?」 そう言う木崎に、俺は小さく頷いた。 「そんなことより、緋桜はどっか行きたい店とかある?」 「え?」 突然聞かれて、俺は秋哉の顔を見る。 「せっかく隣町まで行くんだし、緋桜も行きたい所あったら言っていいんだよ?」 そう言って、木崎は笑う。 「…俺は、よく分からないし……木崎の行きたい所でいい」 そう言って、俺は視線を逸らした。

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