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第62話
10分遅れで電車が来た。俺たちはそれに乗り込んだ。
日曜日ということもあって、電車内はかなり込んでいた。
………この人混み、ちょっとキツいかも…………苦しい。
「緋桜、こっち」
そう思ってると、突然木崎に手を引かれる。
「ここなら大丈夫でしょ?」
木崎はそう言って、俺を角に移動させた。
それどころか、壁に手をついて人が来ないようにしてくれている。
「緋桜、まだ苦しい?」
そう言って、木崎は俺の顔を覗き込む。
「……大丈夫」
そう言って、俺は少し俯いた。
………苦しい。
でも、さっきまでの押し潰される苦しさとは違う。本当何なんだろう、これ………
電車に乗って約20分、ようやく隣町に付いた。
「俺、電車って久しぶりに乗ったけど、あんなに混むもんなんだな」
電車を降りると、木崎はそう言ってぐっと体を伸ばす。
………疲れた、もう既に帰りたい。
そう思って、俺は小さくため息をついた。
「緋桜、大丈夫?」
木崎にそう聞かれて、俺は小さく頷いた。
「じゃあ、行こうか」
そう言って、木崎はニコッと笑う。
「………どこに行くんだ?」
俺がそう聞くと、木崎はうーんと悩んでいた。
「取り敢えず、この辺をぶらぶらする?」
「行きたい所があったんじゃないの?」
「いや実は俺、隣町って来るの初めてなんだよね」
そう言って、木崎はハハッと笑う。
「え?」
「まぁ良いじゃん。適当にぶらぶらして、気になる所があれば行けばいいんだし」
そう言って、木崎は歩き出した。
俺はため息をついて、木崎に着いていった。
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