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第63話
今回の木崎との外出は、どっちもプランを立てていなかったため、行き当たりばったりになった。
ただそのせいか、スムーズにいってる気がした。
俺が出掛ける時は、行きたいと思った店は臨時休業だったり、欲しいと思った物が手に入らないことが当たり前だった。
今回は、それがほとんど無い。
多分、普通の人にはそれが当たり前なんだろうけど、俺にはそれがすごく新鮮で不思議な感覚だった。
服、CD、アクセサリーなど色々見て回った。
今は木崎が入ってみようと言った店に居た。
これは感性の問題なのかな………?
木崎が入ってみよう言う店は、高級ブランドとか値段が高めの店ばっかりだ。
到底、普通の高校生が気軽に買えるものなんて一つもない。
木崎はあれだけでかい家に住んでるくらいだから、金持ちなんだろうとは思ってたけど、ここまで感覚が違うとは思わなかった。
木崎が店に入ると、大抵店員が依ってくるから気が休まらない 。
でも俺が離れると木崎は見るのをやめてしまうから、俺も木崎の隣に居た。
俺の事なんか気にせず、好きなだけ見れば良いのに。
木崎が店員と話をしてる後ろで、俺は小さくため息をついた。
「緋桜、疲れた?」
小さくついたため息に気付いたのか、不意に木崎が聞いてくる。
俺はその問いに首を振る
「大丈夫」
俺がそう言うと、木崎は腕時計をチラッと見た。
「そろそろお昼だし、何か食べようか」
そう言われて、俺も時計を見た。
時刻は、すでに12時を回っていた。
………もしかして、気を使わせちゃったのかな。
「緋桜は何が食べたい?」
「………何でもいい、任せる」
そう言うと、木崎はうーんと悩み出す。
俺たちは、取り合えず飲食店を探して歩き始めた。
……………確かに、何でもいいって言った!言ったけど!
木崎が入ろうとした店は、洒落たフレンチレストラン。
確かに外観からしてお洒落な店だけど、高校生が入る店では無かった。
俺は店に入ろうとする木崎を止めて、近くにあったハンバーガーショップに連れていった。
「俺、こういう所初めてだ」
木崎はそう言って、ちょっとワクワクしていた。
正直、俺もこういう所はあまり来たことがない。
「緋桜、あれってどうやって頼むの?」
列に並んでる間、木崎が聞いてきた。
「えっと、あそこから好きなハンバーガーとサイドメニューから一つと、あとドリンクを選べばいい」
緋桜はレジの上に表示されているメニューを指差して説明する。
「ふーん」
そう言って、木崎は食い入るようにメニューを眺めていた。
順番がきて、木崎が頼む。
「緋桜は?」
そう聞かれて、俺はメニューを指差した。
頼んだものが出てくるのを待つ間、ふと注文を担当してくれた女の人に視線を向けた。
女の人は木崎を見て、頬を赤らめて浮き足立っていた。
俺は、今度は木崎をチラッと見る。
…………木崎、気付いてるんだろうな。
次の瞬間、緋桜は何かを思い出したようにハッとして回りに視線を移した。
………やっぱり。
店内にいる女の人がこっちを見てヒソヒソと話をしていた。
木崎は何処に行っても注目されるんだな。
注目した品が出てきて、席まで運ぶ。
俺は木崎に頼んで、隅の方の席にしてもらった。
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