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第64話

なんか注目されてる………… 回りを見ると、皆チラチラとこっちを見てくる。 隅の方の席にしても、あまり意味が無かったみたいだ。 そう思って、俺は目の前でハンバーガーにかぶり付いてる人物に視線を移す。 木崎にはこんなところより、さっきみたいなお洒落なフレンチレストランとかの方が似合うと思う。 俺はああいう雰囲気は苦手だ。 俺と木崎では根本的に違う。 こんな風に俺が木崎の側にいるのは間違ってるんじゃないかと思う。 「緋桜?」 そんな事を考えていると、木崎に声を掛けられる。 「どうした、食べないのか?」 ボーっとしていて食べ物に全く手を着けていなかった俺に木崎が聞いてくる。 「どっか調子悪い?」 「いや、そんな事ない」 そう言って、俺は首を振った。 俺は徐にポテトに手を伸ばす。 ポテトを口に運びながら、俺はもう一度木崎を見た。 食べている木崎を見ていて、俺はある疑問が浮かんだ。 木崎はこういう所に来たことがないって言ってた。 木崎は普段はこういうジャンクフードは食べないんじゃないか? もしかして口に合わなかったり? でも木崎は普通に食べてるし…… 「………おいしい?」 不安になった俺は、木崎に聞いてみる。 「ん?んー美味しいよ」 そう言って木崎は笑う。 俺はそれを聞いてホッとした。 ここには俺が連れてきてしまったから、美味しくなかったらどうしようと思った。 「はい」 木崎が俺の目の前に食べていたハンバーガーを差し出してきた。 「え?」 俺は、木崎のその行動の意味が分からなくて固まってしまう。 「あれ、これが食べたかったんじゃないの?」 ………食べた……かった? 俺は思考が停止して、反応が出来なかった。 考えてようやく理解した俺は、途端に恥ずかしくなった。 「っ!ち、違う!」 俺は思わず叫んでしまう。 思いの外大きい声が出てしまって、俺は慌てて口を押さえた。 「ごめんごめん、俺の勘違いだったね」 木崎は謝りつつも、クスクスと笑っていた。 俺はそんな木崎をジト目で見る。 それでも木崎はずっと笑っていた。 「あの~」 食べ終わって席を立とうとした時、二人組の女子に声を掛けられた。 「さっきからずっと、格好いいなぁって見てたんですよ~。良かったら一緒に遊びませんか?」 彼女たちは『ねぇ』と声を合わせながら言う。 ………これってもしかしてナンパ? 彼女たちの目的って木崎だよね。 木崎はどうするんだろう? 俺なんかと居るより、彼女たちと遊んだ方が……………… そう思って、俺は木崎を見る。 「悪いけど、間に合ってるから」 木崎は彼女たちには目もくれずそう言った。 「え~いいじゃないですかぁ」 木崎が断っても、彼女たちは食らい付いてくる。 木崎を見ると、木崎は恐ろしく冷たい目をしていた。 ………さっきまでの木崎とは別人みたいだ。 「君たちしつこいよ。間に合ってるって言ったの聞こえなかった? 俺たちは君たちと遊ぶつもりはないよ。ただ単に邪魔なだけだから」 木崎は彼女たちにそう言うと『行こう』と言って俺の手を引いた。 彼女たちは木崎の気迫に負けてか、何も言えずに固まっていた。 「……良かったのか?」 「何が?」 「彼女たち」 「あぁ、問題無いでしょ。俺、ああいう馴れ馴れしいのって嫌いなんだよね。それに、俺は緋桜といる方がいいし」 そう言って、木崎はニコッと笑った。 「……そうか」 彼女たちより俺を取るなんて……… 俺は途端に顔が熱くなって、目を伏せた。 「さぁ次は何処に行こうか。緋桜は気になる店とかある?」 「え?えっと…………」 そんな事を話ながら俺たちは大通りの方に歩いていた。 大通りに差し掛かった瞬間、大通りの方から物凄いスリップ音と衝突音が聞こえてきた。

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