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第67話

(秋哉side) 緋桜の様子を見ると、顔からは血の気は引いていて、まだ微かに震えている。 呼吸はだいぶ整ったみたいだけど……… これ以上、緋桜を連れ回すのは無理だな。 かといって、今の緋桜を電車に乗せる訳にはいかない。 そう思って、俺は佐々木に電話をした。 結構大きな事故だったらしく、パトカーや救急車のサイレンの音がここまで聞こえてくる。 緋桜はそれにも怯えてるようだった。 緋桜の中の一番大きいトラウマはやっぱり事故。 不安なのか、緋桜はずっと俺の服の裾を掴んでいた。 「………緋桜、大丈夫?もうすぐ佐々木が迎えに来るから」 そう言うと、緋桜は小さく頷く。 「………緋桜……」 「ごめん…………」 緋桜に言葉を掛けようとした瞬間、緋桜に遮られる。 「え?」 「………ごめん……せっかく、木崎が誘ってくれたのに……俺……」 自分がこんな状態になっていても、人の事ばかり気にする 「いいよそんなの気にしなくて。それより、佐々木が来たら俺の家に行くけどいい?今の状態の緋桜を一人に出来ないから」 そう言うと、緋桜はまた小さく頷いた。 緋桜に取って、一番のトラウマ。 事故が原因だと思うけど、詳しくは分からない。多分、聞いても話してはくれないだろうな。一人で抱え込まずに話してくれればいいのに。 しばらくすると佐々木が来た。 「すいません秋哉さん、お待たせしました」 「いや、悪かったな急に呼び出して」 「いえ、それより……………」 佐々木は俺の後ろにいる緋桜に視線を向ける。 佐々木には詳しく話してないけど、緋桜の様子を見て、何かあったことは察したみたいだった。 「取り敢えず、乗ってください」 そう言って、佐々木は後部座席のドアを開ける。 「さぁ、緋桜くん」 そう言って佐々木が緋桜に促すと、緋桜が俺をチラッと見てきた。 「秋哉さんも乗ってください」 そんな緋桜に気付いたのか、佐々木は俺にも後部座席に乗るように言ってきた。 俺もその意味を理解して緋桜と一緒に後部座席に乗り込んだ。 「家でいいですか?」 佐々木も運転席に乗り込んで、バックミラー越しに確認する。 「ああ」 「分かりました」 そう言って、佐々木は車を走らせた。

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