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第73話

(秋哉side) 俺が『話がある』と言ったら、緋桜が不安そうにした。 緋桜のことだから、また良くないことを考えてるんだろう。 ただ俺も、珍しく緊張してて顔が強張ってたのかもしれない。 俺がなにか言おうとすると、緋桜は目を瞑って『聞きたくない』と態度で示していた 緋桜は多分、俺が離れたいとか話すと思ってるんだろうな。 この態度は、少しでも俺と離れたくないって思ってくれてるのかな? そう思ってくれてたら良いけどな。 ただ緋桜の様子を見ていると、余りにも聞きたくないと態度に出てるから俺は思わず笑ってしまった。 緋桜は瞑ってた目を開けて、笑っている俺を見てポカンとしている。 「…ごめん、緋桜が余りにも聞きたくないって顔に出すから」 俺がそう言うと、緋桜はムッとした顔をした。 「そんなに深刻な話じゃないよ。今度の祝日、一緒に出掛けようって言いたかったの」 俺は出来るだけ、なに事もないように言った。 これはあくまで俺が緋桜と出掛けたいだけ。それがたまたまその日だっただけ。 俺はそういう風に振る舞った。 「………今度の、祝日…?」 その日を聞いた途端、緋桜の顔が曇った。 今度の祝日。 それは緋桜にとって、一生忘れられない最悪の日。 「……その日は無理だ」 緋桜は俯いてそう言う。 それも、予想の範囲内だった。 「なら、今日のリベンジってことでさぁ」 俺がそう言うと、緋桜は黙ってしまった。 緋桜は今日、俺に迷惑を掛けてしまったと思ってる。 緋桜には悪いと思うけど、俺はそこにつけこんだ。 「緋桜?無理かな?」 緋桜は断らないと確信があった。 今日のことを出せば、自分より人のことを考える緋桜なら必ず首を縦に振ると思った。 緋桜の気持ちを利用するのは卑怯だと思う。かなり強引ではあると思う。 でも、その日に緋桜に来てもらわなきゃなんの意味もない。 「…………………分かった」 緋桜はしばらく考えて、そう答えた。

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