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第74話
行き先を告げられないまま、俺は車に揺られていた。
俺は窓の外をボーっと眺める。今は高速を走っていて、窓から見える風景は山が殆どだ。時折、遠くの方に民家が見える。
………どこに行くんだろう……?
二人して、なにか企んでる風に見えた。
行き先を教えてくれないのもそのせいなんだろうな………
せっかく木崎が誘ってくれたのに、今日はあまり楽しめない。
いや、正確には今日"だから"楽しめないんだ。
そんな事を考えながらボーっとしていると、車の振動もあって眠気が襲ってくる。
ここ最近、あまり眠れてなかった。
どうしても、この日が近付いてくると眠れなくなる。
あの時の夢を見て、その度に魘されて目が覚める。
またその夢を見ると思うと、寝るのが怖くなった。
そうなると、自然と寝ることを避けるようになる。
いま寝ても、きっとあの夢を見てしまう。
そう思って、俺は襲ってくる睡魔に必死で抗っていた。
そんな時に、横からスッと手が延びてきた。
俺はその手に一瞬ビクついてしまう。
見ると、木崎が困ったように笑っていた。
「緋桜、眠かったら寝ていいんだよ?」
そう言って、木崎が頭に手を置いてくる。
「……………いやだ」
俺がそう言うと、木崎はクスッと笑う。
「大丈夫だよ、なにかあれば俺が起こしてあげるから」
多分、木崎は俺が眠れてないのに気付いてる。
………木崎はどこまで分かってるんだろ。
そう思って俺は木崎をじっと見る。
目が合うと木崎はニコッと笑った。
俺は思わず、目を逸らしてしまった。
木崎はそんな俺を、何も言わずに頭を撫でてきた。
その手が心地よくて、だんだん瞼が落ちてくる。
それに抗うことが出来なくて、意識が霞んでいく。
「~~~」
木崎がなにか言った気がしたけど、俺はそれを聞き取ることが出来なかった 。
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