78 / 452
第75話
(秋哉side)
緋桜が眠れてないのは、見て分かった。
恐らく、この日付近は精神的に不安定になるんだろう。
そんな事を思いながら、チラッと緋桜を見る。
緋桜は窓の外をボーっと眺めていた。
これから緋桜にすることは俺のエゴだ。
緋桜にしてみたら余計なお世話なのかもしれない。
勝手なことをしてる自覚はある。
本来、他人の俺が関わる事じゃない。
話を聞いたからって、関わって良いことにはならない。
これは、緋桜にとって本来は触れて欲しくないこと。
………緋桜の為といいながら、実際は自分の為……なのかな。
そう思って、俺は思わず笑ってしまった。
ふと緋桜を見ると今にも寝てしまいそうだった。
でも、緋桜はそれに抗ってるようだった。
緋桜に向かって手を伸ばすと緋桜は一瞬ビクッとするけど、俺が頭に手を置いてもそれ以上は嫌がらなかった。
最近、緋桜は俺が触れる事を許してくれるようになった。
少しは心を開いてくれてるのかな。
「眠かったら寝ていいんだよ?」
そう言うと、緋桜は『嫌だ』と首を振る。
緋桜は『眠れない』んじゃなくて、『眠りたくない』んだ。
「大丈夫だよ、なにかあれば俺が起こしてあげるから」
そう言うと、緋桜がこっちをじっと見てきた。
そんな緋桜に俺は笑い返すと、緋桜は目を逸らしてしまった。
俺は何も言わずに、緋桜の髪を撫で続けた。
しばらく撫でてると、緋桜がうつらうつらとし始める。
緋桜自身も限界だったんだろう。少しでも寝れれば良い。
多分、俺はこれから緋桜を傷付ける。
緋桜が望んでも無いことをしようとしている。
正直、どうなるかは俺でも分からない。
そんな賭けみたいなことを緋桜にしようとしている。
俺は完全に目を閉じてる緋桜を見つめた。
緋桜の髪を優しく撫で続ける。
「ごめんな」
俺は眠ってしまった緋桜に、ボソッと呟いた。
ともだちにシェアしよう!